第2章 広島と長崎の被爆はどのように違うのか

第2章については、私なりに調査し分析した結果から次のように広島と長崎を比較した。

1. 広島と長崎の比較

(1)原子爆弾(以下「原爆)」が投下された日時

ア、広島:1945年(昭和20年)8月6日午前 8時15分
イ、長崎:1945年(昭和20年)8月9日午前11時2分

(2)被爆した人数

ア、広島:20万2000人(14万人±1万人)
イ、長崎: 9万4000人( 7万人±1万人)

●1995年厚生省(現厚生労働省)の調査による1985年までの原爆死没者数
●カッコ内の数値は、1976年に国連事務総長に提出された、広島・長崎の専門家などの調査による1945年12月末までの推定死没者数で、後に国際的に追認された。

(3)原爆の種類

ア、広島:ウラニウム爆弾(砲身型)U235(天然に産出する放射性元素)
イ、長崎:プルトニウム爆弾(爆縮型)Pu239(核分裂により生成する人工元素)

●広島型の原爆は、実験を経ずすぐ使用されたため、エネルギーなどの値は推定値。
●長崎型の原爆は、威力として広島型の1.5倍と言われ、また長崎型はプルトニウムの物性に由来する毒性の強い原爆と言われている。

(4)広島と長崎の地形の影響

広島の状況(左)と長崎の状況(右)(原爆写真「ノーモア ヒロシマ・ナガサキ」から)

ア、広島:土砂等の堆積で作られた沖積地で地形が平坦(上の図左)
イ、長崎:浦上川に沿う低い山に囲まれた細長い盆地(上の図右)

● 地形の違いと、人口密集度の差が被害の大きさを左右した。

広島型「ウラン爆弾」Little Boy

(5)原爆による被害

ア、広島:原爆(重さ4トン、長さ3メートル、直径0.7メートル)はB29爆撃機から投下されたのち数十秒間落下し広島市上空580メートルで爆発した。
イ、長崎:原爆(重さ4.5トン、長さ3メートル、直径1.5メートル)は同じくB29爆撃機から投下され、約1分後長崎市上空500メートルで爆発した。

長崎型「プルトニウム爆弾」 Fat Man

(6)原爆のエネルギー

ア、広島:TNT火薬 約12.5キロトン±1キロトン相当
イ、長崎:TNT火薬 約22.0キロトン±2キロトン相当

●B29爆撃機1機当たりの通常爆弾搭載量4.5トンと仮定した場合、原爆エネルギーは、実に爆撃機3000~4500機が一度に同じ地点を集中的に爆撃した場合の破壊力に相当し、さらにこの上に放射線障害や放射能の影響が加味される。

(7)爆発とキノコ雲の形成

 爆発の瞬間、摂氏100万度以上、数十万気圧の火球が出現する。火球は、強烈な熱線や放射線を放出し、衝撃波を外方へ伝搬させながら瞬時に膨張し、1秒以内に直径280メートルに広がり、同時に急速に上昇してキノコ雲(原子雲)を形成し、約20分後に成層圏に到達する。

(8)熱線

 地上には摂氏3000度~4000度の熱線(鉄は1535度で溶融)が降り注ぎ、屋外で被爆した人は、爆心地(GZ)からの広島・長崎では、次の距離で熱線・熱傷を受け、大火災や火事嵐も発生した。

広島:直径1.3キロ
長崎:直径1.6キロ

(9)衝撃波と爆風

 衝撃波とは、高圧の空気の壁が音波のように伝わるもので、爆心地付近における圧力は、35トン/㎡と言われ、音速(爆発の瞬間は超音速)で外方に伝搬し、10秒後に3.7キロ、30秒後に約11キロの距離に達し、そこで破壊力はほとんど消滅したと言われている。

 衝撃波が通過した後を猛烈な爆風が見舞い、すべての建物が全壊し、木造建物は半壊した。

広島:2.7キロまで半壊
長崎:1.1キロで全壊、半壊は3キロ

 窓ガラスの破損は、

広島:27キロ
長崎:19キロ

 爆風と熱線の複合作用は、
広島:GZから直径約2キロ
長崎:2.5キロ

 上記の距離以内の建造物が見る間に崩壊・全壊した。爆風の風速は、秒速350~500メートルと推定されている(台風による国内でのこれまでの瞬間最大風速は、85.3mである)。

(10) 放射線

 爆風や熱線による殺傷・破壊もさることながら、放射線による殺傷力・破壊力の凄まじさは、通常兵器の概念を全く変えてしまう威力であった。

●初期放射線は、爆発後1分間照射されると言われ、目に見えないが、眼球の中を通過する際に青い光を発すると言われている。

●初期放射線は、中性子線、アルファー(α)線、ベータ―(β)線、ガンマー(γ)線からなるが、中でも中性子線とγ線は物質を通過する能力が非常に強く、人体の内部に浸透して細胞を破壊した。

広島:GZから1キロ以内
長崎:1.15キロ以内では、50%の人が死亡したと言われている。

●残留放射線は、爆発後1分以降長期にわたり人体などに影響を与え続ける放射線である。地上への放射性降下物(フォールアウト)の蓄積であった。これを「死の灰」とも呼び、気象条件特に風向(風下)に影響を及ぼす。