(英エコノミスト誌 2014年8月2日号)

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領がウクライナで打って出た賭けの代償が大きくなっている。それでも方針変更の兆しは見られない。

「世界で最も影響力ある人物」にプーチン大統領、フォーブス誌

ウラジーミル・プーチン大統領は西側の圧力に屈する兆しを見せていない〔AFPBB News

 米国と欧州連合(EU)の首脳が強調するように、これは新たな冷戦の始まりではないのかもしれない。しかし、EUと米国が7月29日に発表したロシアへの懲罰的な制裁は、ロシアを欧米のパートナーにしようという25年にわたる努力の終わりを意味する。

 この不和がいつまで続くか、亀裂が深まるかどうかは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の対応にかかっている。何より重要なのは、プーチン大統領が、自ら煽り立てているウクライナ東部の血なまぐさい紛争をこれ以上激化させるのを控えるかどうかだ。

 現在のところ、その兆しは全く見られない。それどころか、プーチン大統領は欧米に対する好戦的な姿勢と、強情な孤立志向を強めている。

マレーシア航空機の撃墜で、ためらっていた欧州首脳も決意

 数カ月にわたってばらばらの対応を続けてきた米国とEUが、ついに協調して厳しい制裁を決断した。対象はロシアの国有銀行で、ロシアの石油産業、軍事産業が必要とする技術の輸出も禁止される。これだけの制裁では、ロシアを屈服させることにはならない。しかし、すでに低迷しているロシア経済に大きなダメージを与えることはできるだろう。

 プーチン大統領に対するこうした強硬姿勢のきっかけとなったのは、ロシアがウクライナ東部で支援する分離派の仕業と思われる7月のマレーシア航空機の撃墜だ。プーチン大統領は責任を認めようとせず、悲劇の後、むしろ分離派への軍事支援を強化した。

 これで、自国経済への悪影響を恐れて制裁に反対する向きもあったEUの首脳たちは、プーチン政権に懲罰を科すしか選択肢はないと確信した。米国のバラク・オバマ大統領は新たな制裁を発表する際、「これは避けられない道ではなかった。ロシア、中でもプーチン大統領が下した選択だ」と述べた。

 国有銀行への制裁はロシア経済に最大の、そして最も差し迫った脅威をもたらす。米通信社ブルームバーグによると、VTB、ズベルバンク、ガスプロムバンク、開発・対外経済銀行(VEB)の4行合わせて、ドル建て、ユーロ建て、スイスフラン建ての債券約150億ドル相当が3年以内に満期を迎えるという。

 新たな制裁が科されれば、これらの銀行が欧米の資本市場で株式や債券で資金を調達するのは難しくなる。長期的に外部からの資金調達の道を断たれれば、債務の返済は困難になる。

 ロシアへの国際資本の流れはすでに弱まっている。外国銀行からロシアへのドル建て融資は、2013年上半期には250億ドルだったが、2014年上半期は79億ドルにまで落ち込んだ。その結果、国内の企業は国有銀行への依存を強めた。