(2014年7月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

シリアとイラクの武装勢力、イスラム国家樹立を宣言

イラク・サラハディン州の道路を走る「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の戦闘員らを写したとされる写真〔AFPBB News

 黒地に白い文字の刻まれた「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」の旗が今、シリア東部の町デリゾールのほとんどの地域ではためいているが、他の反政府勢力によると、地上にISISの戦闘員の姿はほとんど見えないという。

 ISISは秩序を保つために地元の部隊を使い、一定の距離を置いて町を支配している。デリゾールのハムザ旅団のムンディル・サファン氏は、「彼らは町にやって来て、『誰もお前たちの邪魔はしない。だが、何か必要なものがあれば、我々が助けてやる』と言った」と話す。

 バシャル・アル・アサド大統領率いるシリアの政府軍と戦っている多数の反政府勢力と同様に、サファン氏の部隊は、アルカイダから分派したISISがデリゾール県の9割を掌握したと主張する中で、以前と変わらぬ活動を行っている。「ISISは、我々の部隊が以前と同じように地域を統治するに任せている」とサファン氏は言う。

 シリアとイラクの多くの地域でISISは電撃的に勢力を拡大した。その重要な要素は、ISISが制圧した地域で権力を維持するために、ごくわずかな軍事力しか使っていないことだ。ISISは、他の反政府勢力から徐々に支配権を奪うために、恐怖と分断とソフトパワー戦術を混ぜ合わせたモデルを完成させているように見える。

攻撃を仕掛ける前から統治計画を立案

 ISISが掌握している地域の活動家や住民によると、ISISは軍事攻撃を始める前から統治の計画を立て始めるという。戦闘員や活動家の潜伏組織は、最初の攻撃の準備をするだけでなく、ISISの権力基盤を徐々に固めるための行政、社会プロジェクトも用意するのだ。

 ISISはまず、抵抗を和らげるために、サファン氏のハムザ部隊のように同盟関係にはないが脅威にならない地元勢力や、ISISが勢力を拡大する中でISISに忠誠を誓った数千人の過激派と領土を共同統治する。

 「その手法は、『征服するためには謙虚になれ』というアラブの表現のようだ。ISISは勢力を拡大し、基盤を固めながら、味方をつくっている。その後は、ISISが完全な支配を敷くことができる」。シリアの監視団体「シリア人権監視団」のラミ・アブデル・ラーマン代表はこう説明する。

 ISISは今や「イスラム国」を自称し、カリフ制イスラム国家を樹立していると主張している。ISISは油田や銀行、軍事施設を占拠することで、歴史上最も裕福で最も強力なジハード(聖戦)主義集団の1つになった。完全に掌握した地域では、ISISはイスラム法の厳格な解釈を実行に移している。窃盗犯には手足の切断の刑罰を科し、婦女子には顔と髪を隠うベールの着用を強い、宗教少数派には隷属的な地位を押し付けている。