(英エコノミスト誌 2014年7月19日号)

安倍晋三氏の輝きがいくらか褪せてきた。

 記憶にある中で最も長く続いている日本の内閣では、これまで自信がどんどん膨らむような雰囲気が漂っていた。何しろ、ほぼすべてのことが安倍晋三首相の思う通りになってきた。首相本人の健康が回復したし、安倍内閣の閣僚は、日本の政治家が習慣のように繰り返す失言やスキャンダルを避けてきた。

 だが、7月13日に行われた滋賀県知事選挙での与党の敗北は、政府を慌てさせた。一方、安倍氏の顧問らは、かつては揺らぐことのなかった首相の支持率が全国世論調査で低下し、初めて50%を割り込んだ理由を説明するのに苦労している。

憲法解釈変更と原発再稼働

 2つの敗北には関連性があり、恐らくは安倍氏が、大半の国民の意思に反して日本の安全保障政策の歴史的改革を断行したと見られているやり方と関係している。政府は7月、限定的な「集団的自衛権」を行使できるようにする平和憲法の解釈変更を閣議決定した。自衛隊は、日本の安全が脅かされた場合に同盟国の支援に駆けつけられるようになる。

 安全保障に対する有権者の慎重な姿勢を考えると、集団的自衛権の容認に向けた転換が安倍氏の政治的資本を多少使い果たすことは必然的だった。多くの人は、政府が憲法改正というずっと困難な道を避け、憲法解釈の変更という(一般的だが多少卑しい感じのする)ごまかしによって変更を図ったことを批判した。

 安倍氏の超国家主義的な歴史観も、近隣諸国を激怒させるとともに国内に一定の不安感を与え、今回の動きを後押しするどころではなかった。

 最後に、多くの日本人は、安倍氏が見るからに平和主義を掲げる連立相手の公明党を脅し、集団的自衛権に関する変更を支持するよう迫ったことを嫌った。公明党は、数百万人の信者を擁する創価学会を後ろ盾としている。彼ら――その中でも特に女性――は地方の選挙応援部隊となって公明党や安倍氏率いる自民党に票を運んでくる。

 公明党に対する強硬な態度は裏目に出た。滋賀県では、自民党の候補者に投票したり、投票を依頼したりする創価学会のメンバーはいつもより少なかった。選挙では小鑓(こやり)隆史氏(自公推薦)が楽勝すると見られていたが、元民主党衆院議員の三日月大造氏が僅差で勝利を収めた。

 自民党の敗北は、安倍氏にとってさらなる頭痛の予兆なのかもしれない。三日月氏は卒原発を公約に掲げて選挙戦を戦った。これは滋賀県では効果的なテーマだ。有権者は、県境のすぐ先にある福井県内の原子炉が間もなく再稼働されることを恐れていたからだ。