(2014年7月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 米エール大学の大学院生だったジェフリー・シー氏は、初めて北朝鮮を訪問した2年後に、平壌(ピョンヤン)の政府関係者から支援を求めるメッセージを受け取った。

 それは2009年の暮れが近づく頃で、北朝鮮のデノミ(通貨単位の切り下げ)で大勢の商人の貯蓄が事実上ぱあになった直後のことだった。デノミは大失敗で、北朝鮮では珍しい市民の抗議が起き、その責任を問われた財務部長が処刑された。

デノミの衝撃で目覚めた北朝鮮人

 だが、当時24歳で、すでに数カ月かけて北朝鮮でビジネス教育プログラムを実施する方法を模索していたシー氏にとっては、平壌からの要請は大事な機会をもたらしてくれた。彼は今、近代的な経営慣行について何百人もの北朝鮮人を教育してきた非営利団体(NPO)「チョースン・エクスチェンジ(朝鮮交流)」を運営している。

 「通貨改革によって、北朝鮮人は、自分たちが知らないことがたくさんあることに気づいた」とシー氏は言う。為替レートに関する教育プログラムを企画しないかと誘われた時、シー氏は銀行や経済発展機関に勤めていた友人たちに声をかけ、平壌で金融ワークショップを運営することにした。

 以来、チョースン・エクスチェンジは北朝鮮政府のパートナーの承認を得て、北朝鮮とシー氏の母国シンガポールの双方で教育プログラムを運営している。プログラムは規模を拡大するとともに頻度を高めており、今年第1四半期だけで180人以上の実習生がプログラムに参加した。

 北朝鮮政府が長期低迷する経済を活性化させるために集産主義の公式教義の違反に対して柔軟な姿勢を取るようになる中、研修コースは北朝鮮で増加する小企業のオーナーを支援するよう設計されている。チョースン・エクスチェンジの実習生の大半は国営企業か国営機関に勤めている。だが、主にレストランやカフェなど小規模な事業を経営している人もおり、研修プログラムは、より多くの北朝鮮人の参加を促したいと考えている。

 北朝鮮での研修では、外国人のボランティア――大抵は起業家かマーケティングの専門家――が通訳の助けを借りて西側の商慣行について講義する。

通訳が時間をかけて外国の商慣行を説明

 ことビジネスに関しては「北朝鮮に存在しない語彙がたくさんある」。チョースン・エクスチェンジ幹部のアンドレイ・アブラハミアン氏はこう指摘する。「ワークショップのリーダーがワンセンテンス話すと、メッセージが確実に伝わるように、通訳が2~3分かけて説明することがある」

 ワークショップのリーダーは、企業の社会的責任から資産負債管理まで様々なテーマに関して講義してきた。実務演習は参加者が使えるスキルに重点を置き、事業戦略を立案したり、紙のオモチャを作って買い手を見つけるロールプレイング演習で顧客の好みに応じる練習を行ったりする。