(2014年7月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

「ウクライナ兵が幼児はりつけに」、露TV報道に批判の声

ウクライナ東部のスラビャンスク近郊で、装甲兵員輸送車の上に座るウクライナ兵ら〔AFPBB News

 この数週間、最初はイラク、次にガザでの攻撃により、世界の関心はウクライナから逸れてしまった。ウクライナ軍はその間に、東部地域の親ロシア派武装勢力との戦いで優勢に立ったようだ。だが、これは欧州中心部の安全保障危機における大詰め、つまり、目前に迫るウクライナの勝利を告げるものではない。

 10日前に親ロシア派の分離主義勢力を主要拠点のスラビャンスクから駆逐したことは、間違いなく画期的な成果だった。2カ月前には、士気の落ちた寄せ集め部隊に見えたウクライナ軍は再編成され、少なくとも基本的な装備を与えられて戦う意志を見いだした。

親ロ派武装勢力に支援を続けるロシアの狙い

 だが、ルガンスクとドネツクに後退した反政府勢力がすぐに再び逃げ出さない限り、民間人の命、住宅や産業、インフラの損害といった形でこれらの都市の奪還にかかるコストは壊滅的なものになりかねない。

 さらに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、今年3月のクリミア併合以降、国内で人気の波に乗っている。プロパガンダマシンと化したロシアのテレビは今も、ロシア語を話す住民に対するウクライナの残虐行為疑惑を絶え間なく報じている。

 このためプーチン大統領としては、ウクライナにおけるロシアの大きな目標を少なくともいくつか達成しない限り、個人的な敗北のように見える反政府勢力の敗走を許すわけにはいかない。ロシア側の目標とは、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないという保証、ゆっくりとした欧州連合(EU)統合、および(または)継続的な影響力と欧州・大西洋機構へのウクライナ合流に対するある種の拒否権をロシアに与えるウクライナによる緩やかな連邦制度への移行などだ。

 こうした目的を果たそうとするうえで、ウクライナ東部を不安定にすることが、同国に圧力をかけるロシア政府の最大の手段になっている。

 ロシアは、ウクライナ危機をくすぶる紛争状態に保ち、何千人もの避難民を生み、ウクライナの産業集積地を破壊し、ウクライナ政府からより大きな経済、統治問題に取り組む力を奪うこともできる。

 ロシア政府は、部分的にはウクライナ中央政府に対するある種の心理戦の一環として、ウクライナ東部の全面侵略という選択肢を残しているように見える。NATOによると、ウクライナとの国境地帯に配備されたロシア軍の部隊は、6月上旬に「2000~3000人程度」に減ったが、最近、装甲車を備えた「緊急即応」部隊を含め、1万~1万2000人規模に増強されたという。