(2014年7月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 カトリック教会が貧しい人々の支援に力を入れるようにするというローマ法王フランシスコの「ミッション」の一環として、宗教事業協会(IOR)――スキャンダルが多く生じているバチカン銀行の正式名称――の規模が大幅に縮小される。複数の内部関係者が語った。

 この組織見直しの概要は、同銀行の年次報告書の発行(同報告書の発行は今回で史上2度目)とともに今週発表され、127年の歴史を持つ同行は資産運用の権限の大半を剥奪される見通しだ。数十年に及ぶ汚職や不正行為によりバチカンのイメージを大きく傷つけてきた同行は、世界各地の宣教師や教会に資金を送るという原点に立ち返ることになる。

資産運用の機能をはぎ取り、スキャンダルの根源を排除

ローマ法王、就任後初のクリスマスで世界平和への祈り

「貧しい人たちのための教会」を掲げるローマ法王フランシスコがバチカン銀行の改革に乗り出す〔AFPBB News

 資産運用の機能をはぎ取ることにより、1980年代からバチカン銀行を悩ましてきたスキャンダルの大半の根源を取り除きたいとローマ法王庁の幹部は考えている。1980年代には「神の銀行家」と呼ばれたロベルト・カルヴィ氏が、ロンドンのブラックフライアーズ橋で首を吊った状態で発見されるという事件もあった。

 今回の合理化に詳しい人物の話によれば、バチカン銀行の新総裁にはインベスコ・ヨーロッパの最高経営責任者(CEO)だったジャン・バティスト・ドゥ・フランス氏の名前が挙がっている。同行の金融事業の規律に対する評価を高めるのが狙いだという。

 法王に近いある人物は「これ以上スキャンダルを起こすわけにはいかない」と語った。

 同行をスリム化する法王の計画は、数々の不正行為が発覚した後に打ち出された。内部関係者らが示唆するところによれば、昨年2月に前法王ベネディクト16世がほとんど前例のない生前退位に踏み切ったのは、聖職者による性的虐待スキャンダルに加えて、同行での不正行為のためだった可能性もある。

 イタリアの検察当局は今年1月、高位聖職者ヌンツィオ・スカラノ氏をマネーロンダリング(資金洗浄)の容疑で起訴した。スカラノ容疑者は、ローマ法王庁の巨大な不動産・ソブリン債投資ポートフォリオを管理するAPSAという部署に勤め、寄付と見せかけた資金をIOR経由で数年にわたって洗浄していたとされている。

 また今年5月には、バチカンで法王ベネディクトに次ぐナンバー2の座を昨年退いたタルチジオ・ベルトーネ枢機卿が、カトリック協会内の組織「オプス・デイ」のメンバーである友人の制作会社に1500万ユーロの融資を認めた疑いでバチカンの当局から取り調べを受けているとの情報が流れ、ローマ法王庁がその否定を余儀なくされた場面もあった。

 バチカン銀行の広報担当者によれば、この融資による損失は2013年の利益急減の一因になったと述べている。詳細は今週中に発表されるという。