(2014年7月8日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

負傷のネイマール、準決勝の出場は「難しいかも」 ブラジル指揮官

ネイマールの負傷は、ブラジルにとって国家的な悲劇だった〔AFPBB News

 先週後半、2つの国家的悲劇がブラジルを襲った。ベロオリゾンテ市では、高架道路が崩落し、2人の死者を出した。

 その翌日、ブラジルはサッカー・ワールドカップ(W杯)の準々決勝でコロンビアと対戦した。ブラジルは試合には勝ったが、チームのスター選手で国家的シンボルのネイマールが背中に怪我を負い、大会の残りの試合に出られなくなった。

 この2つの事件のうち、ネイマールの脊髄骨折の方が、同胞2人の命を奪った手抜き工事よりはるかに大きなメディアの苦悩を呼んだと言って差し支えないだろう。

 ブラジルは伝説的なサッカー監督、ビル・シャンクリーの格言に従って生きているように見える。リバプールの監督を務めた時期で最も知られるシャンクリーは「サッカーは生きるか死ぬかの問題だと考える人がいる・・・だが、断言しよう。サッカーはそれよりずっと、ずっと重要だ」という有名な言葉を残した。

 2つの事故は、ブラジルのサッカーの才がなぜ神の恵みであるだけでなく、呪いにもなり得るのかを説明している。ブラジルのサッカーの見事な腕前を祝うべき理由は明白だ。ブラジルのサッカーチームは全世界の何百万人もの人に喜びを与えた。「セレソン(選抜代表)」の黄色いジャージは、アマゾン川やリオデジャネイロのビーチ以上に際立つブラジルの象徴だ。

 だが、ブラジルの輝かしいサッカーは時折、国民生活の他の分野における才気を刺激するインスピレーションではなく、その代用品としての役割を果たしているように見える。

W杯の高揚感で、昨年の大規模デモの要求が隅に追いやられる恐れ

 昨年は一時、ブラジル国民がついにこのゲームに飽きたように思えた。今年のW杯の前哨戦となるコンフェデレーションズカップの期間中、W杯主催に対する莫大な支出に抗議する大規模デモが起きた。

 何百万人ものブラジル国民がいまだにスラム街で暮らし、まともな衛生設備や医療、教育、輸送を得られないにもかかわらず、ブラジルは、ピカピカの新しい競技場や、国際サッカー連盟(FIFA)が要求する他の設備の建設に110億ドル以上の資金をつぎ込むことにした。デモ隊は、競技場だけでなく「FIFA基準」の学校と病院も求めて声を上げた。

 だが、W杯本番の期間中も抗議行動が同じような規模で繰り返されるとの予想は間違っていた。その代わり、ブラジルはサッカーのメロドラマに夢中になった。