(英エコノミスト誌 2014年7月5日号)

アルゼンチンの債務問題の行き詰まりは、ルールは破るためにあるという10代の若者の態度を反映している。

かむなら我が社の商品を&「かみつき」スアレスにツイッターで便乗広告

イタリア戦で相手チームの選手に噛みつき、出場停止処分となったウルグアイ代表のルイス・スアレス選手(右)〔AFPBB News

 素晴らしい才能を持つが心理的に欠陥のあるウルグアイのストライカー、ルイス・スアレスが6月24日、ワールドカップ(W杯)の試合でイタリアを相手に得点できないことへの苛立ちを、相手チームの選手に噛みつくことで表したのは、衝撃と言えるものでは決してなかった。

 何しろ彼は過去にも2度、やはり相手に噛みついたことがあった。

 それより驚きだったのは、サッカー界と政界双方のウルグアイ当局の反応だ。最初に出てきたのは、事実の否認と陰謀説だ。噛みついた歯型は写真で加工されたものか、古傷だった、というのだ。次は、スアレス選手に対する厳しい出場停止処分への激しい怒りで、彼は不当な扱いを受けた英雄として帰国を歓迎された。

 スアレス選手の行動はただの子供じみたいたずらに過ぎない、とウルグアイのホセ・ムヒカ大統領は主張した。

アルゼンチンの「ビベザ・クリオージャ(民族的ずる賢さ)」

 サッカーの法律に違反したスアレス選手と共謀することで、大抵は分別のあるムヒカ大統領は、順法精神のあるウルグアイよりも、アルゼンチンのスポーツクラブ「リーベルプレート」全体ではるかに一般的な行為にふけっていた。お咎めなしになると信じて、気に入らないルールは破っても構わないという10代の若者の一種のナルシシズムを発揮したのだ。そして、お咎めなしで済まなければ、それは世界が自分に敵対しているからであって、やはり不当だというわけだ。

 アルゼンチンには、こうした考え方を少なくとも部分的に表した言葉がある。ビベサ・クリオージャ(民族的なずる賢さ)という言葉だ。

 ビベサ・クリオージャは、クリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領とその亡き夫で前大統領のネストル・キルチネル氏という2人の指導者の下で行われたアルゼンチンの経済政策の顕著な特徴でもある。

 アルゼンチンは経済学のルールや世界のルールではなく、独自のルールに従って行動できるという考え方は、消費者物価指数をごまかすことで、景気拡張的な政策のインフレ圧力を政府が否定したことに象徴されていた。その一方で、キルチネル夫妻は国の問題をすべて国際通貨基金(IMF)のせいにした。