安倍政権が集団的自衛権の行使を解禁したことは、米国でどう受け止められているのか。

 オバマ政権はためらいなく歓迎の意向を表明した。政権内外の識者たちもみな賛成のようである。特に日米同盟の強化を年来、主張してきた共和党側では、今回の日本政府の動きを大歓迎し、礼賛している。

 米国の大手ニュースメディアも大多数は日本の今回の動きを日米同盟へのより大きな貢献、あるいはアジア地域での中国の軍事攻勢への有益な抑止策として前向きに受け止めていた。

 だが、そんな中での例外は「ニューヨーク・タイムズ」だった。日本の集団的自衛権行使容認は中国や韓国が反対するから好ましくないというのだ。安倍晋三首相が軍国主義をにじませるナショナリストだから今回の措置は危険だ、ともいうのである。そうした部分を見る限り、安倍打倒キャンペーンを異様な執拗さで展開する朝日新聞と奇妙なほど似た論調なのだ。また中国や韓国の立場に立っての反日スタンスだとも言える。

「ウォールストリート・ジャーナル」は安倍政権の政策を賞賛

 そんな偏ったニューヨーク・タイムズの主張を紹介する前に、まず一般の米国のメディアの論調を具体的に伝えておこう。同じ大手紙の「ウォールストリート・ジャーナル」(7月2日付)の「日本の新しい防衛態勢」と題された社説である。この論調は、現段階では米国メディア全体の平均値だと言ってよい。その要点は以下のようなものだった。

 「日本の内閣は7月1日、自国に集団的自衛権の行使を許すために憲法を再解釈した。この歴史的な措置は遅きに失した決定だが、アジアの民主主義諸国の安全保障を強化することになる。さらに同様に重要なことに、この措置は、中国の東シナ海での侵略的な行動が、どのようにして日本をアジアでより積極的な役割を果たすようにさせてしまったかを、中国政府自身に考えさせることになるだろう」

 「安倍首相はタカ派であり、この集団的自衛権行使容認を強く求めたとはいえ、中国が日本の安全保障環境に変化を与えたことが、日本のこの動きを必要かつ不可避にしたのだ。これらの変化とは、中国による急速な軍事能力の増強や、尖閣諸島の現状を軍事力で変更しようとする試みを含んでいる」