(英エコノミスト誌 2014年6月28日号)

コスト危機、労働市場の変化、そして新たな技術が、古い教育制度をひっくり返すだろう。

「オックスブリッジ」に比肩する新大学、英一流学者らが創設へ

大学教育のあり方が大きく変わろうとしている〔AFPBB News

 高等教育は、福祉国家の偉大な成功の1つだ。かつては一握りの人々の特権だったものが、主に政府の支援のおかげで、中流階級の権利になった。この夏、米国ではおよそ350万人、欧州では500万人が大学を卒業する。新興国でも大学は活況を呈している。中国では、大学生数が20年で3000万人近くも増加した。

 だが、高等教育のあり方は、アリストテレスがアテナイのリュケイオンで教えていた時代からほとんど変わっていない。今でも、若い学生たちが決められた時間、決められた場所に集まり、学者たちの叡智に耳を傾けている。

 しかし今、革命が始まった。その原動力になっているのは、コストの上昇、需要の変化、破壊的技術の3つだ。この革命により、大学は根本から作り直されることになるだろう。

キャンパスを離れ、オンラインで

 高等教育は、「ボーモルのコスト病」に苦しんでいる。ボーモルのコスト病とは、生産性の停滞する労働集約型の分野でコストが高騰する傾向を指す。

 自動車やコンピューターなど、多くのモノの価格が劇的に低下している一方で、公的部門の資金援助と、雇用主が学位に与えるプレミアムに守られた大学は、同じサービスに対する価格を絶えず引き上げることができた。ここ20年を見ると、米国で大学教育を受ける際のコストの上昇率は、毎年の物価上昇率を1.6ポイント上回っている。

 ほとんどの学生にとって、大学は今でも貴重なものだ。ある試算によれば、学位の取得による生涯収入の増加額は、正味現在価値で59万ドルに上るという。だが、多額の借金を抱える学生も増えている。特に、米国で47%、英国で28%に上る学生が課程を修了せず、借金が残ることが多い。そうした学生にとっては、出費に見合うだけの価値がないのは明らかだ。

 また、資金などの援助に対する政府の意欲も低下している。米国では、2007年から2012年にかけて、学生1人当たりの政府の援助額が27%減少した一方で、平均授業料は物価上昇を差し引いても20%増加している。英国では、20年前には無料に近かった授業料が、いまでは年9000ポンド(1万5000ドル)に達することもある。

 変化の第2の原動力は、労働市場だ。標準的な高等教育のモデルでは、学生は20代のうちに大学に通う。学位は知的職業階級に入るためのチケットだ。

 だが、作業の自動化が、これまでブルーカラーの職に及ぼしてきたのと同じ影響をホワイトカラーの職にも及ぼし始めている。オックスフォード大学の研究によれば、今後数十年で自動化されるリスクにさらされる職業は、全職種の47%に及ぶという。イノベーションにより一部の職が一掃され、一部の職が変化していくのに伴い、人は生涯を通じて、自らの持つ人的資本を補強する必要に迫られることになる。