本記事は6月20日付フィスコ企業調査レポート(アジュバンコスメジャパン)を転載したものです。
執筆 客員アナリスト 
浅川 裕之
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今中計は新規事業への参入など大きなチャレンジに挑む

 アジュバンコスメジャパン<4929>は今中期経営計画で、いくつかの大きなチャレンジを行う。具体的には、業務用カラー剤市場への参入、海外展開、営業人員増強、国内マーケティングの強化などだ。なかでも業務用カラー剤の成否は特に重要だと言えよう。この事業の成否は、既存の一般消費者向けの化粧品販売の今後の成長性についても大きな影響を及ぼすものと考えられる。今中計期間は、今後の同社の趨勢を決する極めて重要な時期と言える。

 弊社ではそれぞれの施策について分析し、最も重要な業務用カラー剤については少なくとも今中計目標は十分達成可能であるという見方に至った。この業務で一定の成果を出せれば、スキンケア、ヘアケアの既存商品への波及効果も期待でき、全社の収益が中計目標値以上になることも十分期待できると考えている。

 業務用カラー剤以外にも営業人員の拡充や、社外企業との提携を通じたマーケティング力の強化など、複数の施策が盛り込まれている。それぞれが有機的に絡み合っている内容であるため、業務用カラー剤事業と併せて、全体的に中計は成功していく可能性が高いとみられる。不安材料は海外展開だが、ここからの利益インパクトは小さく、大きな懸念は不要であろう。

 同業のミルボン<4919>、コタ<4923>と3社間で比較した場合、同社の株価バリュエーションはPERでもPBRでも最も割安圏に置かれている。一方で、財務分析によれば、同社のROEが最も高く、その質も高いという状況だ。要因の1つとしては流動性ディスカウントが考えられるが、個人投資家層を中心に同社のクオリティの高さや潜在成長性の高さが認識されるにつれ、バリュエーションも調整が進むと期待される。

Check Point

●同業他社に比べて利益率の高いビジネスモデル
●今後は新規事業が増収率を押し上げへ
●新たな成長ドライバーとして業務用カラー剤に参入

会社概要

安心・安全な自然派化粧品を美容サロン向けに販売

(1)沿革と事業モデル

 同社は1990年4月、現社長の中村豊(なかむらゆたか)氏や専務取締役の田中順子(たなかじゅんこ)氏らにより、神戸市で「有限会社みずふれんど」としてスタートした。創業当初は、化粧品と家庭用浄水器販売がメイン事業だったが、1992年3月に「有限会社アジュバン関西販売」へ商号を変更、アジュバン化粧品の製造・販売を開始した。証券市場には2012年12月に東証2部上場を果たし、2013年には東証1部に指定替えとなった。