「ネット上のデータは、誰もが様々な状況で記録したものの集大成であるが、それが未来永劫誰でも閲覧することができ、誰でも知ることができるということの意味合いを、果たして社会が理解しているのかどうか疑問だ」

 グーグルのエリック・シュミット会長は、4年前の新聞インタビューでこう語った。当事者が他人事のような物言いだが、シュミット氏は今のソーシャルメディアやブログなどで、人々が事細かに自分のプライベートなことを公表していることを指してコメントした。

 将来的に後悔して削除しようとしても、削除は難しい。10年、20年前に若気の至りで犯した過ちが、いつまで経ってもその人の名前を検索すると出てくる。記憶から消してしまいたいことでも、インターネットは忘れさせてくれない。

 その状況が少なくともヨーロッパで変わった。

 先月、欧州連合(EU)司法裁判所は、ネット上の他人に知られたくない個人情報を、本人の希望があれば削除するようグーグルに命じた。EUは「忘れられる権利」を人権として認め、今後法制化する方向にある。

 グーグルが削除の申請を受け付け始めてから、最初の4日間で4万1000件の申請があった。単純計算で1日1万件以上だ。申請されたものを全て受け付けるのか、どのような基準で認めるのかなどの細かいルール作りはこれからになるという。

 シュミット氏は、この判決に対して「残念だ。行き過ぎた処置だ」とコメントしている。

死んだ人のフェイスブックはどうなる?

 「言論の自由」を大切にする米国では、この判決に対して、嫌悪感を伴った激しい反発がある。特にここ地元のシリコンバレーでは、メディアから司法関係者、専門家、政治家などあらゆる人が批判論を展開している。