(英エコノミスト誌 2014年6月14日号)

なぜ中国は栄養不足であると同時に栄養過多なのか?

 2000年以上前、中国の古典的医学書「黄帝内経」は、肥満を「脂肪分の多い肉類と精製された穀物」の食べ過ぎが引き起こす病気としていた。一世代前までは、上流階層以外の全ての人にとって、そのような食生活は想像を超えた贅沢だった。

 しかし、それ以来、中国人の胴回りは憂慮すべきペースで膨張してきた。

 成人人口の4分の1以上、数にしておよそ3億5000万人が過体重か肥満だ(6000万人以上が後者の範疇に入る)。どんなに少なく見積もっても、この数字は栄養不足人口の2倍に上る。

 所得の増加と食生活の多様化に伴い、脂肪分の多い食品と炭酸飲料の摂取量がかなり増えている。現在の食事に含まれる油脂類と肉類の量は1980年代の2倍以上に上る。

成人の糖尿病発症率はほぼ米国並み

 これにより、心臓病(現在、死因の3分の1以上を占める)と、それほど目立たない糖尿病の急増の両面で健康被害が生じている。肥満と密接に関係する糖尿病の患者数は、過去30年間で10倍以上に増えた。最近の国家統計によると、中国の成年人口の11.6%が糖尿病を発症しており、肥満率がはるかに高い米国とほぼ同水準となっている。

 悲惨な飢饉がまだ生きている人の記憶に残るなか、中国人が脂肪と糖分を多く含む食事を好むようになったことに意外感はない。中国栄養学会の範志紅氏は、大躍進時代の飢饉と文化大革命時代の食糧不足を生き抜いた世代は、とにかく「昔の暗黒時代」の粗い穀物を食べることを止めたがり、糖尿病の発症に加担する精製された穀類や小麦粉を好むようになったと言う。

 北京協和医院で糖尿病を専門とする医師、向紅丁氏は「手遅れになる前に、今、おいしいものを食べる方がいいと考える人もいる」と話している。60歳以上の中国人の2割近くが糖尿病を患っており、その比率は国民平均の2倍に上る。

 実のところ、裕福になるにつれて中国人の食事量が増えているわけではない。1日当たりの平均摂取カロリーは過去10年間で若干減少しており、2001年は2100キロカロリーだったものが、現在は2000キロカロリー強となっている。この数字は、あまり体を動かすことのない生活様式が食生活の変化と同じくらい国民の健康を蝕んでいる可能性を示している。

 急速な都市化は、体力的にあまりきつくない製造業の仕事に就くために田畑を後にする人が増えていることを意味している。一方、都市部では、徒歩と自転車での移動が、自動車の運転と公共交通での座ったままの移動に取って代わられた。最近の調査では、都市部の住民のうち定期的に運動している人は10%に満たないことが分かった。