(英エコノミスト誌 2014年6月7日号)

日本の高級車ブランドは、ドイツのライバル車にまだ大きく水をあけられている。高級車ブランドを抱える日本の大手自動車メーカーは、大きな潜在的利益を取り逃がしている。

 1989年、レクサスが米国で発売される1カ月前、トヨタ自動車は、丘の上のお城で賑やかなパーティーを開くドイツ貴族が出てくるテレビ広告を流すことを検討していた。ドイツ人は60年近くにわたって高級・高性能車市場を独占してきたが、「それを楽しめるのもあと30日だけ」というナレーションを入れていた。

 そのCMがテレビで流れることはなかったが、それはかえって好都合だった。メルセデス、BMW、フォルクスワーゲン(VW)グループのアウディというドイツの3ブランドは、新興国市場の成長によって世界的な高級車需要が膨らむにつれ、ますます支配的になったからだ。

 一方、日本の3大自動車メーカー、トヨタ、ホンダ、日産自動車が1980年代に生み出した高級車ブランドのレクサス、アキュラ、インフィニティは取り残された(図参照)。

 現在、ドイツのトリオが合計で、スピードが出て高額かつ豪華な自動車市場の7割を占めているのに対し、日本勢のシェアはたった1割だ。

 そして日本勢は、英国企業の(ただし、インド人が保有する)ジャガー・ランドローバー(JLR)に追い抜かれている。JLRの昨年の販売台数は50万台に迫り、レクサスのすぐ後ろにつけた。

 日本勢はドイツ車との差を縮めるために新たな取り組みを実施している。インフィニティは先月、新型の「Q50」を皮切りに、もっと「情熱的な」ラテンの雰囲気を持たせるようデザインを刷新し、「冷たく、感情のない」ドイツ車との差別化を図ると発表した。

 レクサスは間もなく、成功を収めているJLRの「レンジローバー・イヴォーク」やアウディとBMWの類似車に対抗して、小型SUV(スポーツ用多目的車)「NX」を市場へ送り出す。アキュラは流線形で全体的に長いデザインのセダン「RLX」の新モデルに望みを託している。

利益率の高い高級車事業

 トヨタ、ホンダ、日産にとって、高級車事業はちょっとした副業よりもずっと大きなものだ。少なくとも、そうであるべきだ。競争が熾烈な大衆車市場の利益はゼロに等しいほど小さいことがあるが、高級モデルの利益は1台当たり数千ドルにも上る。従って、自動車メーカーの高級車販売が多少でも改善されれば、会社全体の業績に、台数とは不釣り合いなほど大きな影響を与える。

 日産の役員のアンディ・パーマー氏が言うように、高級車は自動車産業全体の「販売台数の12%、利益の50%」を占めるのだ。