(英エコノミスト誌 2014年6月7日号)

資産価格間の古い関係の復活

 欧州は、不利な人口動態と債務危機の遺産が長期にわたる低成長と低インフレ(場合によってはデフレ)につながる「日本化」に屈しつつあるのだろうか?

 状況はそれほど絶望的ではないと主張するエコノミストもいる。欧州には、改革という薬の投与によって成長率を高める方法がたくさんある。例えば、労働市場の柔軟性を高めたり、カルテルのような職業別組合の影響力を減らしたりできる。だが、ある重要な分野で日本化が姿を現し始めている――債券市場である。

 過去10年以上というもの、日本の政府債務(現在、国内総生産=GDP=比230%)がいずれ日本国債を打ちのめすと信じて国債が下落する方に賭けていた弱気派は、失望させられてきた。利回りは極端に低い水準で推移してきたからだ。日本国債の空売りは富を大きく破壊してきたため、「ウィドウメーカー(大損する恐れのある危険な投資)」として知られるようになった。

 ユーロ圏では近年、「欧州周縁国」の国債利回りの急上昇とその後の低下に焦点が当てられてきた。欧州の中核国と考えられている国々の利回り低下には、それほど注意が払われてこなかった。

 ドイツの10年物国債利回りは米国の10年物国債利回りより1ポイント以上低い。ドイツ銀行のジム・リード氏は、オランダ国債の利回りは同国史上最低水準に近いと言う(図参照)。

 多くの投資家は、経済が回復するにつれて世界の債券利回りは上昇すると信じて今年を迎え、それとは反対方向の動きに驚かされている。その理由の一端は、期待外れの経済指標にあるのかもしれない。米国の第1四半期のGDPは予想外に縮小した。HSBCのフレデリック・ナーブランド氏は、世界経済は既に、2009年に始まった今の景気循環のピークに達した可能性があると考えている。

スイスに見る欧州の未来

 ユーロ圏のインフレが低水準であることも、もう1つの要因だ。何しろ今年5月のインフレ率(消費者物価指数の上昇率)は前年比わずか0.5%だった。その状況は、最近までの日本と同じように、欧州の債券利回りが実質ベースでまだプラスであることを意味している。

 スイス(ユーロ圏には属していない)で起きていることが、欧州の未来を暗示する前兆かもしれない。BCAリサーチのダーヴァル・ジョシ氏は、驚くべき日本との類似点をいくつか挙げる。現在、両国の債券利回りは酷似しており、ちょうどゼロを付けているスイスのインフレ率は日本より低いのだ。