(2014年6月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

反政府デモとの衝突で警官撃たれ死亡、ベネズエラ

ベネズエラでは今年、反政府デモと機動隊の衝突で40人以上が命を落としている〔AFPBB News

 中南米が米国の外交政策においてたまにしか重視されないのは、恐らく、両者が互いに注意を払わない時期が何年も続いたせいなのだろう。確かに、もっと急を要する問題はいつもほかの地域で発生しているように見える。

 しかし、ここに来て、ベネズエラをどう扱うかという頭の痛い問題が浮上している。

 ベネズエラでは今年に入ってから、街頭での抗議行動で40人以上が命を落としている。人権を侵害しているとの批判を浴びている政府と、野党勢力との話し合いは停滞している。その一方で国民は、猛威を振るうインフレ、物資の不足、頻発する犯罪に苦しめられており、首都カラカスは世界で最も殺人事件の多い都市の1つになっている。

 米国にとって4番目に大きな石油供給国であるベネズエラは、重要ではあるものの簡単には解決できない危機にどう対処すべきかという実存的な問題を米国に突きつけている。その意味では、ベネズエラの問題は、米国がほかの国や地域で抱える外交政策上の問題と同じものだが、これには国内要因のひねりが1つ利いている。ベネズエラは「キューバ化」しているのだ。

キューバ系米国人の有力議員らがベネズエラ制裁を求める理由

 米連邦議会では現在、人権侵害を行ったベネズエラ政府高官らの資産凍結とビザ(査証)発給停止を求める法案が計2本審議されている。どちらの法案もキューバ系米国人の有力議員たちが提出したものだ。彼らは「ベネズエラは新しいキューバだ」と考えており、長年にわたるキューバへの禁輸措置を強く支持している。

 ベネズエラとキューバを結びつける理屈はこうだ。ベネズエラは毎年、キューバに何十万バレルもの石油を割安な価格で提供している。共産主義のキューバ政府は、社会主義のベネズエラ政府に医師や高度な訓練を受けた諜報部門のアドバイザーを送り込んでいる。ベネズエラを罰すれば、その最大の同盟国であるキューバを苦しめることにもなる――。

 しかし、連邦議会に提出された法案には目的がもう1つある。ベネズエラの無秩序な状態にキューバが関与していることへの人々の意識を高めることにより、米国の政策を変更させてキューバとの関係拡大に道を開きたいと考えている米国内の勢力に対抗する狙いがあるのだ。かつてサイラス・ヴァンス元国務長官がキューバについて述べたように、「米国人は、この国のことになると物事を冷静に見られなくなってしまうようだ」

 ジョージ・W・ブッシュ政権で国家情報長官を務めたジョン・ネグロポンテ氏をはじめとする元外交官や元軍司令官など40人以上のグループが先日、バラク・オバマ大統領に書簡を送った。キューバ国内の変化を惹起・促進するために米国とキューバ社会との接触を拡大するよう促す内容だった。