(英エコノミスト誌 2014年6月7日号)

台頭する中国を世界に順応させることは、ますます難しくなっている。

 外交というものは大抵、意図的な不明瞭さや、うわべだけの礼儀に包み込まれている。公の場での言い争いは、そうした重苦しい雰囲気からの救いとして歓迎されることがある。そのため、楽観論者は、6月1日にシンガポールで中国と日米両国の間に見苦しい言い争いが勃発した時、それを前向きな動きと受け止めた。

 対立しながらも遠回しな言い方しかしない者同士が、少なくとも互いの懸念を率直に伝え、重苦しい空気を取り払った。抑制がすり切れ、これまで隠されてきたそれぞれの国の我慢の限界が露わになった。互いの誤解という暗闇からついに、「戦略的な明瞭さ」の形が姿を現すかに思えた。

 しかし、その明瞭さは、決して純粋にありがたいものではない。そこに見えてきたのは、中国と西側諸国を分かつ大きな隔たりだった。中国が思い描く将来の自国の役割と、西側が中国に望む大国としてのあり方は、決定的に食い違っていた。

 いざこざが起きたのは、アジア各国の防衛担当の高官が年に1度集まるアジア安全保障会議でのことだ。この集まりは、毎年シンガポールのシャングリラホテルで開催され、その名前からシャングリラ・ダイアログとも呼ばれる。

 13年目となる今回の会合は、アジア地域の安全保障上の懸念を明るみに出す絶好のタイミングだった。この6カ月間というもの懸念が急激に高まり、中国が係争中の領土・領海について攻撃的な姿勢を強めていると考える近隣諸国が脅威を感じていたからだ。

南シナ海でベトナムに強硬姿勢、中国の狙いは 専門家が分析

多くのアジア諸国が中国の海洋進出を警戒している(写真は南シナ海でベトナムの船艇に放水する中国海警局船)〔AFPBB News

 2013年11月、中国は東シナ海の防空識別圏(ADIZ)を一方的に宣言した。日本の施政下にある尖閣諸島(中国名:釣魚島)もその範囲に含まれる。

 そして2014年1月、今度は南シナ海で漁業に関するADIZに相当するものを宣言し、外国の漁船が圏内に立ち入る場合、中国の許可を得るよう求めた。

 さらに5月、ベトナムが自国の排他的経済水域(EEZ)と見なす海域に、大規模船団の護衛付きで巨大な石油掘削装置を運び込み、同じ南シナ海のフィリピンが領有権を主張する岩礁でも建設工事を開始した。尖閣諸島の周辺でも、ジェット戦闘機を日本の偵察機に危険なほど接近させている。

米国が指揮者、日本がソリストを務める協調した中国叩き

 恐らく中国は最初から、今回の会合は、米国が指揮者、日本がソリストを務める協調した中国バッシングの機会になると危惧していたのだろう。日本の安倍晋三首相が会合の基調演説を行うと分かった時、漠然とした不安は確信に変わったはずだ。中国は安倍首相を、日本のかつての軍国主義を復活させることに熱心なトラブルメーカーとして敬遠している。

 そのため、中国の代表団は他国と異なり、国防相が率いてはいなかった。しかし、警戒心を露わにした人民解放軍の幹部が何人か出席した。安倍首相の演説は、あからさまではないにせよ、基本的に中国とその最近の行動に関する内容で、中国側は当然ながら気分を害した。