(英エコノミスト誌 2014年5月31日号)

日本で初めて、移民に関するしっかりとした議論が始まっている。

 安倍晋三氏が2012年に首相の座に返り咲いて以来、掲げられてきたスローガンは、日本を長期にわたるデフレスパイラルから脱却させる、ということだった。だが、人口がどの国より速く高齢化し、減少している時は、それは口で言うほどたやすいことではない。

 今年5月、あるシンクタンクは向こう30年余りの間におよそ1000の地方の市町村で出産適齢期の女性がほとんどいなくなると予想した。政府は、今後50年間で現在1億2700万人の日本の人口が3分の2に減少すると予想している(図参照)。

 実際、政府は2110年には、日本人の数がわずか4300万人になると予測している。

 最後の予想は、非科学的な外挿だ。100年後の日本がどうなっているかなど誰にも分からないからだ。それでも、この予側は政府が懸念を募らせていることを示す尺度であり、また、強い日本を取り戻すという首相の思いと両立させるのはなかなか難しい。要するに、人口動態がいま再び、熱い政治的課題として浮上しているのだ。

使い古されてきた案も出ているが・・・

 最大の問題は、急速に収縮する労働人口が、増え続ける高齢者人口を支えられなくなることだ。部分的には、政府は使い古された案を持ち出してきている。例えば、日本は出生率を引き上げなければならない(だが、それは容易なことではない)。また、労働力不足を補うために、工場や高齢者向け介護施設で運用できるロボットを開発しなければならない、といった具合だ。

 この問題を専門に扱う「選択する未来」委員会会長の三村明夫氏は、人口が1億を切るのを食い止めるのであれば、政府は今すぐ対策を講じなければならないと述べた。同委員会の報告書は、そのためには平均的な日本人女性が生涯で生む子供の数を、現在の1.41人から2.07人に増やさなければならないと指摘している*1

 白髪頭のメンバーが多数名を連ねる同委員会は寝室に立ち入ってまで、女性をその気にさせようとしているようだ。

 しかし、人口問題の専門家は、日本の社会構造の全面的な再設計が必要だと話している。安倍氏は女性が職場に復帰しやすくなるよう、公立保育所を増設する計画を打ち出した。だが、働く母親にとって大きな障害は、長時間労働や同僚と付き合う深夜の飲みといった日本の企業文化だ。文化を変えるには、長い時間がかかることがある。婚外子に対する偏見もそうだ。

 一方、出生率を上げるために講じられた最近の対策――若い女性に出産のタイムリミットについて思い出させる婦人科医を割り当てる策など――は、絶望感さえ帯びている。

*1=この記事が出た後に発表された2013年の人口動態統計では、合計特殊出生率が1.43となったが、人口減少は加速していることが分かった