(2014年6月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今週の世界一ストレスの多い仕事は、エリゼ宮(フランス大統領官邸)の外交儀典長の仕事だろう。ホワイトハウスは5月30日、バラク・オバマ米大統領が6月5日にフランスのフランソワ・オランド大統領と「私的な夕食」をすると発表した。クレムリンがウラジーミル・プーチン大統領も同じ日にオランド大統領と「非公式な夕食会」を行うと発表した直後のことだ。

 米ロ両国の大統領はその後、翌日のノルマンディーでの午餐会と式典に参加し、Dデーの上陸作戦開始70周年を祝う。来賓名簿にはウクライナ新大統領に選ばれたペトロ・ポロシェンコ氏の名前もある。

 ロシアがクリミアを併合して以降、プーチン氏はオバマ氏はじめ西側の指導者と初めて直接顔を合わせることになる。この遭遇は外交上の失態が生じたり、両大統領の国内の批評家たちの気に入らない気まずい写真を生み出したりする可能性に満ち満ちている。だが、顔合わせは、ロシアと西側諸国の双方の政府が次のステップを巡って何らかの形の合意を見いだそうとしている、ウクライナ危機における重要な時期に行われる。

 5月25日の大統領選挙第1回投票でのポロシェンコ氏の圧勝は、ウクライナ東部の新たな暴力を食い止めることはなかったし、今後数日間の出来事が、各国首脳が今週末にフランスに集まる前に外交交渉の可能性をふいにしてしまう恐れもある。

ウクライナ大統領選で形勢に変化

 だが、プーチン大統領によって承認されたポロシェンコ氏の圧勝と、ロシア軍がウクライナとの国境地帯から撤収し始めた兆しは、米国や欧州の高官たちに、これから事態を掌握できるかもしれないという一定の楽観をもたらした。

 オバマ政権の元高官は「クリミア併合以降の2カ月間というもの、プーチンがすべての切り札を持っているように見えた。だが、ウクライナの大統領選挙がある程度、形勢を平等にした」と言う。

 欧米の高官たちによれば、今週のオバマ大統領の欧州訪問――大統領はポーランドも訪問し、ブリュッセルで開催される主要7カ国(G7)首脳会議にも参加する――の焦点の1つは、ロシア政府への影響力を行使するための新しい共通見解を描くことだという。

 当初、ロシア軍がウクライナ東部に侵攻すれば厳しい経済制裁をロシアに科すと述べていた欧米諸国は、先月には、ウクライナ大統領選挙の不安定化を図るロシアの取り組みも、いわゆる部門制裁を招くと述べた。大統領選挙が比較的円滑に終わった今、西側諸国の政府は、ロシア政府を説得し、隠れた支援を通じてウクライナ東部諸州を不安定にする追加措置の実行を断念させる新たな条件を設けようとしている。

 「ロシアは今、ウクライナ新政権誕生の機を捉えて緊張を緩和させるチャンスを手にしている」と米国のベン・ローデス大統領副補佐官(国家安全保障問題担当)は言う。「だが、ロシアが緊張を緩和させるのに必要な措置を講じている様子はまだ見えない」