(2014年6月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 景気予測の効用なんて、占星術が立派なものに見えるようになるということぐらいだ――。経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスはかつてそう語った。

 エコノミストたちは米国の今年第1四半期の国内総生産(GDP)が前期比年率1%のマイナス成長に終わったことについて、その原因のほとんどは厳冬にあったと述べている。北米に大寒波をもたらした「極渦(きょくうず)」は終わったから、米国待望の景気回復がついに始まると話している。この職業の人たちの揺るぎない自信とは、これほどのものだ。自分のお金のことを考えるなら、星占いか天気予報を見る方がましだと筆者は思う。

伸び悩むどころか低下する大多数の購買力

 景気予測に携わる人々は、米国経済が根本的に変わってしまったという事実をまだしっかり認識できていない。大多数の米国人の購買力は、景気回復が5年前に始まってからも、伸び悩むどころか低下してしまっている。

 調査会社センティア・リサーチによれば、米国の世帯所得のメジアン(中央値)は現在5万3000ドルで、2008年に景気後退が始まった時よりも実質ベースで4000ドル以上――比率で言えば7.6%――減少している。ところが、米国経済全体の規模は景気後退前の水準をとっくの昔に上回っている。

 この犯人は、今日の重要な経済的事実の1つである所得と富の格差拡大だ。英イングランド銀行のマーク・カーニー総裁が先週述べたように、「社会の中における結果の不平等はほぼ例外なく、世代内と世代間の両方において明らかに拡大している」のだ。

 経済成長の果実の大半が一握りの高所得層の手中に収まる時、その果実はほとんど消費に回らない。そのため、経済全体の成長はいつまでも弱々しいままとなる。

 特に不思議な力が作用しているわけではない。例えば、米国住宅市場の回復ぶりについて考えてみよう。住宅市場はここ数カ月間、再び回復の歩みを止めている(これは厳冬の前から存在し、その後も続くマイナスの傾向だ)。

消費に見る著しい二極化

 不動産業者のレッドフィンによれば、米国の住宅を価格順に並べた時の最上位1%――金額で言えば167万ドル以上の高額物件――の今年1~4月期における販売戸数は、前年同期比で21%増加した。2013年通期では同35%の増加だった。2013年に特に大きく伸びたのはサンフランシスコ湾周辺の地域で、ここの最上位1%の最低価格は535万ドルだったという。

 一方、下位99%の物件の今年1~4月期における販売戸数は、前年同期比で7.6%減少している。要するに、これが現在の米国経済である。住宅の販売戸数は全体では増えている。しかし、ほとんどの人はそれを実感していないのだ。