(英エコノミスト誌 2014年5月31日号)

欧州の首脳は多くの分野でEUの権限を縮小する必要があるが、中には拡大すべき分野もある。

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AFPBB News

 「欧州の諸国民の間にかつてないほど緊密な団結の基礎を築くとの決意で・・・」と、欧州統合プロジェクトの端緒として1957年に制定されたローマ条約は宣言している。

 欧州連合(EU)の歴史が書かれる時、2014年は1957年と同じほど重要な年とみなされる可能性が高い。というのも、2014年は欧州の有権者がその首脳に、半世紀以上前にこの大胆な企ての発端となり、それ以降も数々の政策を形作ってきた高邁な志を捨て去るように命じた年だからだ。

 反EU派への投票が多くなることは予想されていたが、それでもやはり、その規模は衝撃的だった。フランスでは、マリーヌ・ルペン氏率いる国民戦線(FN)が25%の票を得てトップに立った。英国独立党(UKIP)は27%と、さらに多くの票を集めた。ギリシャでは、約40%の票が、EU懐疑派やあからさまに人種差別的な主張を持つ党に流れた。

 次期の欧州議会では30%もの議席を、反体制と反EUのいずれか、あるいはその両方を掲げる党が占めることになる。フランスのマニュエル・バルス首相が選挙後、政治的な「激震」について話したのも無理はない。

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 この選挙結果が政治に及ぼす直接的な帰結は、非常に大きな意味を持つまでには至らないかもしれない。欧州議会の中では、ポピュリストが恐らく激しく言い争うため、70%を占めるEU統合派はこれまでと同様の合意形成を続けられるだろう。

 しかし、長期的に悪影響は甚大なものになりかねない。欧州は、英国(与党の保守党が次回選挙後にEU加盟に関する国民投票を実施すると公約している)がEUを脱退する可能性に直面している。英国が脱退してもEUは存続するかもしれないが、フランスがルペン氏のような反EU主義者を選んで離脱を決めれば、EUは終わりを迎えるだろう。

 典型的なブリュッセルの危機対応である、何とかその場をしのいでいく手法は、今回の場合選択肢にならない。なぜなら、EUが自発的に変わらなければ、有権者がEUに変化を強いるはずだからだ。有権者の敵意に対応するためには、まずは欧州の首脳が敵意の理由を検証する必要がある。

 ナショナリズムが1つの要因であるのは明らかだ。外国人に指図されたくないという有権者のメッセージは、UKIPやFNといった政党の論壇から、大々的かつ明確に打ち出された。しかも、反EU的な票が投じられるのは今回が初めてではない。フランスとオランダの国民は2005年に欧州憲法条約草案の批准を拒否し、アイルランド国民も2008年に欧州憲法条約に代わるリスボン条約を拒み、その後再投票を要請される事態に至った。