(英エコノミスト誌 2014年5月31日号)

アジアの企業が力をつけている。アジアで新たに生まれている多国籍企業は、いずれ世界中の生活の形を変えるだろう。

 企業の力は経済力に伴って強くなる。1920年代には、英国企業が世界の外国直接投資(FDI)残高の40%を握っていた。1967年までには、米国が首位の座に就き、50%のシェアを手にした。そうした数字の裏にあるのは、文化的な革命だ。

 英国企業は中南米に電信と鉄道を広めた。米国企業は、ハリウッド映画と広告に磨き上げられた「幸せな暮らし」のビジョンを売り込んだ。ケロッグは先進国の朝食を、コダックは休日の記憶の形を変えた。次なる企業による革命は、今週の本誌(英エコノミスト)の特集でも触れているように、アジアで起こりつつある。この革命も、世界の生活の形を変えることになるだろう。

阻まれた発展

 アジアの資本主義には筋力がある。アジアが世界のGDP(国内総生産)に占める割合は、1984年以降、約20%から28%にまで上昇している。アジアは世界の工場であり、互いにライバルとなる様々な地域がサプライチェーンにより結びついている。

 その一方で、アジアに欠けているのが、頭脳と、世界で成功する手腕だ。アジアは世界の鉄の76%を精錬し、汚染の44%を放出しているにもかかわらず、世界のトップブランドとベンチャーキャピタル活動という点では、10分の1を占めるにすぎない。アジアの多国籍企業は能力に見合った活躍ができておらず、世界のFDIに占める割合は17%にとどまる。

 豊かな日本と韓国には、トヨタ自動車やサムスン電子などのスーパースター企業がある。だが、それ以外には、世界の舞台を支配する企業はほとんどない。

 その原因は、アジアの資本主義が域内でぬるま湯に浸かりすぎていたことにある。2002年から2010年にかけての好況時には、国内で容易に利益を上げられた。成長は急速で、労働力と信用は安価に手に入った。

 アジアの大企業の3分の2は、国営企業か「財閥」(多くは同族経営)だ。そうした既存企業は、政府と馴れ合う傾向にあり、土地や融資を安く手に入れやすい。アジアの億万長者の財産の半分は、不動産など、縁故主義に陥りがちな分野で築かれたものだ。欧米では、その割合は15%にとどまる。

 日本、台湾、韓国以外では、技術革新がおろそかにされてきた。自動車大手のインドのマヒンドラ&マヒンドラと中国の長城汽車の研究開発費は、両社合わせても独フォルクスワーゲン(VW)の3%にすぎない。

 欧米の企業にとって、アジアの欠点は安心の源だった。その理由は、「iPhone(アイフォーン)」を見れば分かる。iPhoneは中国人労働者の手で製造されているが、ほぼすべての利益を手にしているのは、その背後にある頭脳、つまりアップルと先進国のハイテク部品メーカーだ。