(2014年5月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

W杯開幕戦のスタジアムで新たな遅れ、2度目のテストが延期に

2014年W杯ブラジル大会の開幕まで、あと2週間余りとなったが・・・(写真は開幕戦が行われるアレーナ・デ・サンパウロ)〔AFPBB News

 ブラジルはだてに「o País do Futebol(サッカーの国)」と呼ばれてきたわけではない。中南米最大の大国ブラジルはワールドカップ(W杯)を5回制覇した唯一の国だ。

 その成功が著しいゆえに、ブラジルは1970年に最初のW杯トロフィーであるジュール・リメ杯の永久保持を許された。当時の国際サッカー連盟(FIFA)の規則は、W杯を3度制した最初のチームにその権利を授与していた。

 ところが、2014年大会が6月12日にサンパウロで始まるまで2週間余りとなった今、ブラジル国民は行く手に待ち受ける大会への熱意をほとんど見せていない。

 このような印象を与えているのは、ストライキやデモの急増だけではない。通常はW杯に先立って見られるブラジルの街頭の賑わい――車は旗や横断幕で飾られ、壁や道路はナショナルカラーの緑と金で塗り上げられる――が、今年はあまり目立たない。通常であれば、3月初めのカーニバルが終わると直ちに始まっていたはずだ。

 では、ブラジルはまだサッカーの国なのだろうか? それともW杯の組織団体であるFIFAと政治的に明敏なルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ前大統領が2007年に大会開催で合意した時に予想できなかったような形でブラジルは変わったのだろうか?

ずさんな準備や公金の浪費に批判、人口動態の影響も?

 ブラジル国民の明らかなためらいには、恐らく2つの理由がある。第1の理由は、W杯開催に向けたずさんな準備が全世界の前で自分たちに恥をかかせることになるとの不安だ。人々はまた、(証拠はまだ何一つ示されていないが)汚職、さらには基本的な公共サービスさえ不足している時に公金の浪費として非難されている大会とかかわりを持つことを嫌っている可能性もある。

 第2の、もっと根深い理由は人口動態と関係している。ブラジルは単に成熟したのだ。過去数十年間にW杯で優勝してきた頃と比べ、ブラジル人は高齢化し、多忙になっている。その結果、国民がサッカーのことを考える時間が減っている。

 野村証券とブラジル地理統計院(IBGE)のデータによると、人口全体に占める15~24歳の人口の比率は、1980年の21%から現在の17%に低下した。

 一方、25~59歳の働き盛りの生産年齢人口の数は1980年の35%から48%に増加した。この年齢層の人たちは現在、ほぼ完全雇用の状態にある。失業率は今年4月で4.9%と記録的な低さで、10年前の12%から大きく低下した。

 また、学校にとどまり、大学まで進学する若者が増えている。野村の調査では、9年以上教育を受けたブラジル人の比率は過去10年間でほぼ倍増したことが分かった。