(2014年5月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 インドで新たな首相が誕生する。これにより、アジアの4大大国すべてが今、好戦的なナショナリストに率いられることになる。戦後秩序の多国間主義の前提が、大国間競争への回帰に取って代わられようとしている。ナショナリズムが勢力を増しており、台頭する東方ほどそれが顕著なところはない。

 一見したところ、インドの総選挙でのナレンドラ・モディ氏の勝利は、地政学とはほとんど関連がないように見えた。モディ氏は、インド国民会議派の無能力と汚職にうんざりした国に向かって訴えかけた。同氏の公約は、経済成長の加速と生活水準の向上だった。

 だが、モディ氏の野望は、国内を超えたところにまで及んでいる。インドは国際舞台で中国に対抗できる国になるべきだ、というのだ。

 モディ氏のヒンドゥー民族主義は、地域のムードに合致している。中国の習近平国家主席は、中華帝国の過去の栄華を取り戻したいと思っている。鄧小平の慎重さは、中国の力に対するしかるべき敬意を求める姿勢に取って代わられている。

 日本では、安倍晋三首相の経済プログラムは、中国に立ち向かうために日本の力を再構築するという決意に突き動かされている。アジアで4番目の国家主義の騎手、ウラジーミル・プーチン氏は、ウクライナへの軍事介入によって協調的な国際秩序を軽視するロシアの姿勢を示した。

安倍氏の日本とモディ氏のインドは「中国封じ込め」で手を組む?

 安倍氏は、モディ氏が外遊する際に東京が最初の訪問先になることを期待している。当局者らによると、インドの次期首相は安倍氏の気質や目的を共有しているという。話題になっているのは、大規模な戦略的取引だ。

 日本は、インドの経済発展を早める技術と投資を持っている。インドは、中国を封じ込めるうえで強力な味方になる。日本は東シナ海で、そしてインドは北部の国境地帯でそれぞれ中国と領有権問題を抱えており、両国ともインド洋での中国の海軍力を懸念している。

 日中関係は、相変わらず悪い。中国は、問題になっている東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)に対する領有権を強く主張している。安倍氏は、戦没者とともにA級戦犯が合祀されている東京の靖国神社を参拝することで修正主義者のポーズを取った。

 バラク・オバマ大統領率いる米国政権は地域の軸となる安全保障同盟で日本に縛られ、中国政府を思いとどまらせようとしながら、日本政府を抑えようとする状況に陥っている。