(英エコノミスト誌 2014年5月24日号)

ナレンドラ・モディ氏の圧倒的勝利により、インドは繁栄に向け、かつてない絶好のチャンスを手にしている。

インド、女児殺しの慣習による危機

インドはまだ世界最大の貧困人口を抱えている(写真はコルカタ郊外)〔AFPBB News

 過去30年に世界で起きた最も重要な変化は、中国の台頭だ。中国の国民1人当たりの国内総生産(GDP)は、30年間で年平均およそ300ドルから6750ドルに増加した。

 これにより、かつては想像もできなかった繁栄が何億人もの中国国民にもたらされただけでなく、世界の経済と地政学も姿を変えた。

 インドの国民1人当たりのGDPは、30年前は中国と同じだった。だが、今では中国の4分の1にも満たない。2~3度の改革と急成長にもかかわらず、インド経済はこれまで、東アジアの多くの国を貧困から引き上げたような勢いを得たことがない。

 インド国民は不満を抱え、仕事や教育を得られず、不健康で飢えている。その観点で言えば、人的損失は計り知れない。

 だが今、インドは史上初めて、成長を最優先事項に掲げる強力な政権を手にした。インド人民党(BJP)を率いるナレンドラ・モディ氏は、インド経済を機能させるという公約の力により、圧倒的な勝利を収めた。本誌(英エコノミスト)はモディ氏を支持してこなかった。モディ氏がグジャラート州首相を務めていた時期に、同州で起きたイスラム教徒の虐殺について、十分な償いをしていないと考えているためだ。

 それでも、本誌はモディ氏の成功を祈っている。インドの成長という奇跡が起きれば、それはインド国民にとってだけでなく、世界にとっても素晴らしいことだからだ。

家臣からリーダーへ

 インドの失敗の中心にあるのは、政府だ。インドが過去に得た数少ない強力な政権――いずれもネルー・ガンジー一族の地盤である国民会議派が支配する政権だった――が立てた経済計画は腐敗していた。退任するマンモハン・シン現首相のような改革派の政治家は、自らの政策を実施できるだけの影響力を持たなかった。

 そうした状況になった一因は、インドが並外れて統治の難しい国だという点にある。権力の多くは各州に移譲されている。インドの政治は小党乱立的な性質があるため、無数の地域政党やカーストベースの政党を相手に、常に取引をしなければならない。そして、植民地時代と社会主義の過去の遺産として、方向を変えるのが難しい官僚組織が残されている。