(英エコノミスト誌 2014年5月10日号)

金融危機の一因となった影の銀行だが、うまく規制すれば、次の危機を回避するのに役立つだろう。

 イングランド銀行総裁で、将来の金融危機を防ぐために立ち上げられた国際監視機関である金融安定化理事会(FSB)の議長も務めるマーク・カーニー氏は先ごろ、世界経済にとって最大の脅威は何かという問いに対し、新興国のシャドーバンキング(影の銀行)であると答えた。

 確かにシャドーバンキングは、世界的な悪鬼となるだけの資質を持っている。巨大で、ある一定の形態で急速に成長し、しかもほとんど理解されていない。強力なツールとして役立つ一方で、不用意に扱えば、爆発を引き起こす恐れもあるのだ。

 FSBは、シャドーバンキングを「銀行以外の組織による融資」と定義する。FSBの推定によれば、シャドーバンキングは世界の金融システムの4分の1を占めているという。その資産は10年前には26兆ドルだったが、2013年初めには71兆ドルにまで増加した。一部の国では、さらに急速に拡大している。例えば中国では、2012年だけで42%の成長を遂げた。

 だが、何をシャドーバンキングと見なすかについては、見解が分かれる。核となるのは信用供与だ(融資を手がける中国の信託会社から欧米のピアツーピア=P2P=融資、マネー・マーケット・ファンド=MMF=まですべてを含む)。

 だが、さらに広い定義では、銀行として規制されない企業が行うあらゆる銀行的な活動も含まれる。例えば、英ボーダフォンが提供するモバイル決済システムや、IT企業が構築した債券取引プラットフォームや米ブラックロックが販売する投資商品などだ。

 本誌(英エコノミスト)の特集記事でも解説しているように、そうしたサービスが急増しているのは、従来型の銀行の腰が引けているからだ。従来型の銀行は、金融危機による損失に打ちのめされ、厳しさを増す規則や資本要件、果てしない法的トラブル、莫大な罰金に苦しめられている。規模の縮小や融資の削減を進め、1部門を丸ごと整理しているケースもある。

 例えば米国では、投資銀行はもはや、自己勘定での取引はできず、顧客の代理としての取引しか許されていない。一方、英国の銀行は2007年以降、法人向け融資をほぼ30%も削減している。英バークレイズは先日、最大1万4000人の従業員を削減する計画を正式に発表した。そうした穴を埋めつつあるのが、影の銀行だ。

脆き者よ、汝の名は銀行

 付随的な事業での銀行との競合については、誰もあまり心配していない。例えば、米グーグルが効率的な資金運用手段を提供できるとしたら、それは歓迎されるべきものだ。議論の的になっているのは、信用供与だ。

 ある意味では、銀行システム外の融資が広がっているのは良いことだとも言える。銀行が規制されているのには、1つの理由がある。銀行は大きな「マチュリティ・ミスマッチ」(主に短期で借り入れた資金を長期で貸し付ける)と膨大なレバレッジを抱え、他の金融機関と複雑に絡み合っている。そのため、ことのほか脆い。