南国新聞 2014年5月5日

 (マレーシア/経済)5月2日、マレーシア日本人商工会議所(JACTIM)とジェトロ・クアラルンプールが実施した「2013年度在マレーシア日系企業アンケート報告書」および JACTIMが会員企業を対象に実施した「景気動向調査(2014年上半期)」の発表記者会見がKL市内のJACTIMオフィスにて開催された。

 アンケートは在マレーシア日系企業約1400社を対象とし、回答数は221社だった。調査の実施期間は2014年1月20日から2月21日まで。調査はウェブ上で調査票を配布し、回答を回収する方式で実施された。

 また景気動向調査は JACTIM会員企業579社を対象に2014年3月13日から4月18日までの期間に実施された。回答数は181社で、アンケートと同じくウェブ上で調査票を配布し、回答を回収する方式で実施された。

 調査主催者によるアンケート報告書の要旨を以下のようにまとめた。

 進出日系企業にとって、マレーシアの投資先としての最大の魅力は、政治の安定であり、この傾向は近年、変わらない。マレーシアの国民の語学力を評価する企業も多い。反面、治安に不安を感じる日系企業が最近は増えている。事業活動においては、エネルギー価格・賃金の上昇を課題と考える企業が多いことが浮き彫りとなった。

 個別項目でみると、回答企業の67.6%がマレーシア投資の魅力として「政治の安定」を挙げた。比較可能な2008年度調査以降、本項目は首位を堅持。特徴的な点として、昨年比で「親日的」の評価が高まる一方、昨年は半数以上の企業が魅力とした「安全・治安」は、今回調査で5割を切った。

公共交通インフラ、エネルギー価格、通信インフラに不満と不安

 インフラ面では半数近くの企業(50.2%)が公共交通に改善の余地を感じている。2012年度調査では22.0%の企業が不安と回答した「エネルギー価格(電気代、ガス代など)」が49.3%に急上昇した。2014年1月の電気料金引き上げ後の調査だったことで、懸念が如実に現れた模様だ。

賃金上昇に課題

 労務面では、「賃金の上昇」に課題を感じる企業の割合が前年の52.8%から67.3%に上昇した(昨年度調査の選択肢は「最低賃金の導入」)。

 ちなみに、2013年の最低賃金制度導入後、JACTIM会員企業が雇用するワーカーの平均給与上昇率は、2013年に10%を記録した。このような事情も背景にあると推察される中、同項目は年ごとに上昇しており、マレーシアでの事業展開の大きな課題となっている。

治安・安全面に不安と3割企業が回答

 治安・安全面への現状をどのようにとらえているかとの質問には「ある程度良い」とした企業が67.3%を記録した。

 しかし「やや悪い」又は「とても悪い」と回答した企業を合わせると約3割になった。本項目は投資先の選定にも影響を及ぼす。マレーシア政府による治安維持に関する積極的な取組が望まれる。

3分の1企業が事業拡大を予定

 35.6%の企業が事業の拡大を検討していると回答した。現状維持と合わせると、9割以上が今後の事業展開を考えている。複数の課題を抱えながらもマレーシアの今後に期待を寄せる企業が多いことがわかった。