(英エコノミスト誌 2014年5月3日号)

ウクライナ危機は、ただでさえ衰弱しているロシア経済に打撃を与えている。

ウクライナ軍作戦の死者34人に、新たな内戦の危機

ウクライナ危機がロシア経済に影を落としている(写真はウクライナ東部のドネツクで、占拠した州政府庁舎の外で目隠しをした男性を連行する親ロシア派の武装勢力)〔AFPBB News

 ロシアに対して西側が講じた措置――ウラジーミル・プーチン大統領に近い人物や企業に対する資産凍結、ビザの発給制限など――は些細なものかもしれないが、ウクライナ危機は既にロシアの経済と金融市場に打撃を与えている。

 2014年1~3月期の資本逃避は600億ドルを超えたと見られている。株式市場は年初来2割落ち込み、通貨ルーブルはドルに対し8%値を下げた。

 通貨安が消費者物価に波及することへの懸念から、中央銀行は利上げに踏み切り、3月初めに5.5%だった金利は7.5%まで上昇した。国際通貨基金(IMF)は、ロシア経済が景気後退入りしたと考えており、先日、2014年のロシアの成長率予測を1.3%から0.2%に引き下げた。

ロシアには強い経済的切り札があるように見えるが・・・

 こうした混乱にもかかわらず、ロシアは軍事面だけでなく経済面でも強い切り札を持っているように見える。ロシアは欧州連合(EU)の天然ガス消費量の24%、石油消費量の30%を供給している。ウクライナのガス、石油消費に対する支配力は、それ以上に強い。このため、西側がしっぺ返しを食らわない制裁措置を策定することが難しくなっている。

 またロシアの公的財政は、ウクライナ問題を巡って対立している国々の大半よりもずっと健全だ。昨年の財政赤字は国内総生産(GDP)比1.3%であり、EUの同3.3%より小さい。ロシアの政府債務残高がGDP比わずか13%なのに対し、EUのそれは87%に上る。

 新興国の中では、ロシアは外国からの圧力に耐える頑丈な防衛策を持っているように見える。世界銀行が新たに発表した購買力平価(PPP)レート換算のGDP推計では、ロシアは2011年にこの指標で世界6位の経済大国となっており、ドイツのすぐ後ろにつけている。大規模なエネルギー輸出のおかげでロシアの経常収支は黒字で、IMFは2014年には黒字額がGDP比2.1%になると予想している。

 対照的に、トルコや南アフリカ共和国など、投資家が脆弱な新興国経済について懸念する中で今年大打撃を受けた国は経常赤字が見込まれており、トルコはGDP比6.3%、南アフリカは同5.4%の経常赤字になると見られている。

 黒字を計上してきた長い歴史のおかげで、ロシアは多額の外貨準備を積み上げることができた。ロシアの外貨準備は3月時点で4860億ドルに上っている。IMFによると、この外貨準備は、2014年に国外から調達する必要がある資金需要(対外債務の借り換えから経常収支を差し引いた金額)の4倍の規模だ。トルコの外貨準備は、同様の資金需要の半分しかカバーできない。