(英エコノミスト誌 2014年4月19日号)

繁栄が広がる中、落伍者を自称する世代が出現している。

SMAPの上海公演が延期に

急発展を遂げた中国の都市部だが、上海や北京のオフィスワーカーの間に、落伍者を自称する世代が出現している(〔AFPBB News

 製品検査の仕事をする25歳のジュー・グアンさんは、赤いアディダスのジャケットとキャンバス地のシューズを身に着け、カジュアルな格好よさを醸し出している。顎ひげを伸ばす野心があるけれど伸ばす力がないかのように、薄い口ひげとヤギひげを生やしている。

 彼は表向きは、何百万人といる前途有望な中国経済の勝者の1人だ。大卒で、上海の工場労働者夫婦の一人息子、そして中国最大手クラスのパソコンメーカー、レノボ(聯想集団)に勤めている。

 しかしジューさんは、自分を勝者ではなく敗者だと考えている。毎月手取りで4000元(650ドル)稼いでいながら、顔のない働き蜂のように感じると話している。社員食堂で食事をし、夜になると共同賃貸アパートの20平米の自室に帰宅し、オンラインゲームをする。恋人はおらず、見つけられる当てもない。なぜかと問われると、「自信がないから」と答える。

 似たような生活を送る何百万人もの若者と同じように、彼は自分のことを自嘲気味に、刺激的なスラングで「吊絲(ディアオスー)」と呼ぶ。吊絲は文字通り直訳すれば「男性の陰毛」という意味で、敗者を指す言葉だ。比喩的には、普通の人が成功することが難しくなっている中国経済において、無力感を宣言する言葉である。

 この自虐的な呼び名を使うことは「ガンジーのように」叫び声を上げる方法だと、ジューさんはほんのわずか冗談めかして言う。「これは静かな抗議なんですよ」

 「吊絲」を自称することは、富裕層の腐敗と見なされているものに対抗する、大衆との連帯感を示す誇らしい宣言にもなった。この言葉が中国語に加わったのはつい最近のことで、中国全土の会社員、特にIT(情報技術)産業の労働者の心に訴えている。

日本の「草食系」男子は自らの選んだ生き方だけど・・・

 概ねは男性の吊絲は、社交術に乏しく、オンラインゲームに夢中になっている夢想家が多い。結婚に消極的な日本の「草食系」男子と若干違うのは、その生き方を自ら選んだ吊絲が少ないことだ。特に不動産価格が全く手が届かないレベルまで上昇していることから、社会の方が彼らの地位を定めたのだ。

 最近のいくつかの研究では、中国社会全体で所得が上昇し続けているが、社会的流動性は低下していることが示されている。南京審計学院のイー・チェン氏とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のフランク・A・コーウェル氏の研究では、中国社会の最下層にいる人たちが最下層にとどまる確率は、2000年以降の方が1990年代よりも高かったことが分かった。「中国は硬直化が進んでいる」と2人は結論付けた。