(英エコノミスト誌 2014年4月12日号)

ウクライナ東部で新たな混乱が起きている。5月の大統領選挙を前にこの国を揺るがそうというロシアの思惑が透けて見える。

米、ウクライナ東部の混乱に「ロシア工作員関与」と非難

ウクライナ東部ドネツクの行政庁舎前で、バットを持ってバリケードを守る親ロシア派の過激派活動家〔AFPBB News

 5月25日に行われるウクライナ大統領選挙の最有力候補、ペトロ・ポロシェンコ氏は自信に満ちている。

 「不透明要因はどこにもない。ウクライナは自由で公正な選挙を実施し、合法的に選ばれた力強い大統領を迎える。そして、大統領はウクライナを欧州寄りの国に変える。ロシアの兵士が国境を越えてやって来ることはもうない」

 ポロシェンコ氏の言葉はまるで心理療法だ。ウクライナの人々は、革命の冬と、前大統領ビクトル・ヤヌコビッチ氏の失脚と、ロシアによるクリミアの併合を経て、気が弱り、疲れ果てている。休息と、平和と、普通の生活を切望している。しかし実際にウクライナ国民が直面しているのは、挑発と、侵略や天然ガス価格上昇を示唆する脅しと、ロシアが煽っている分離主義だ。

復活を遂げた「ロシアの春」

 これらはすべて、ロシア側が「ロシアの春」と称するものの一部だ。ウクライナ東部で続けられていたロシアの工作員による活動は、いったんは弱まったように見え、分離主義者の集会も下火になっていた。ところが4月6日、ロシアの春は華々しく復活を遂げた。

 一部武装した複数のグループが、周到に協調した行動でドネツク、ルハンシク、ハリコフの各地方政府の庁舎を占拠し、東部のそれぞれの地域が共和国として「独立」したと宣言したうえで、住民投票とロシアの支援を求めたのだ。彼らは、キエフの独立広場(マイダン)の抗議行動をそっくり模倣し、車のタイヤでバリケードを築き、食料を配った。

 この芝居じみた行動はロシア政府の指示によるもので、ヤヌコビッチ氏とその息子が資金を出したと言われている。ヤヌコビッチ親子は、現在もドネツク州の一部の市長を支配下に置いている。しかし、一連の行動は住民の支持をほとんど得られなかった。東部の住民も、大部分はウクライナの統治を支持しているからだ。

 少人数の侵入者がたやすく庁舎を占拠できたことは、キエフの暫定政府の弱さと、地元警察の動きの重さを証明するものだった。警官たちは、ほんの数週間前まで戦っていた相手に仕えるという事態に士気が低下し、屈辱を感じている。アルセン・アバコフ内相をはじめ、複数の政府高官が現地に派遣され、警察を指揮している。一部の庁舎は奪還したが、残りはいまだ分離主義者が押さえている。

 米国のジョン・ケリー国務長官はロシアの行動について、「主権国家の不安定化をもくろむ違法で正当性のない活動だ。クリミアと同じように、軍事介入の不自然な口実にされる恐れがある」と指摘した。ロシアがウクライナの領土をさらに手に入れるためには、最終的には武力行使しかないため、いずれそうする可能性は残る。