(英エコノミスト誌 2014年4月5日号)

ナレンドラ・モディ氏は恐らく、次のインド首相になるだろう。だが、だからと言って、そうなるべきだというわけではない。

 インドの総選挙の様子には、誰もが驚くほかはない。4月7日から始まる総選挙では、読み書きのできない村人や極貧のスラム住人も、ムンバイに住む億万長者も、等しく同じ権利を行使し、政府を選ぶことになる。有権者は8億1500万人近くに上り、選挙は9回に分けて5週間にわたって実施される。史上最大の民主主義的集団行動だ。

 だが同時に、インドの政治家の無力さと腐敗には、誰もが嘆かずにはいられない。インドには問題が山積しているというのに、国民会議派主導の連立政権下にあった10年の間、この国は舵取り役不在のまま放置されてきた。経済成長率は半分になり、約5%にまで落ち込んでいる。毎年、何百万人の若者を労働市場に迎え入れるだけの雇用を生み出すには、あまりにも低すぎる数字だ。

 改革は実行されず、道路や電気は行き渡らず、子供は教育を受けないままだ。その一方で、政治家や役人は、国民会議派政権下で、総額40億~120億ドルの賄賂を受け取ったとされる。その結果、インド国民は「政治家の仕事は賄賂を受け取ることだ」と考えるようになっている。

インド・グジャラート州議会選、野党BJPが大勝

グジャラート州首相として辣腕を振るってきたナレンドラ・モディ氏〔AFPBB News

 インド次期首相の圧倒的本命が、インド人民党(BJP)のナレンドラ・モディ氏であるのも当然と言える。モディ氏は、対抗馬となる国民会議派のラフル・ガンジー氏とは正反対の存在だ。

 インドの初代首相ジャワハルラル・ネルーのひ孫にあたるガンジー氏が首相に選ばれたなら、神に与えられた権利であるかのようにその座に就くだろう。一方のモディ氏は、かつてはお茶の屋台で働いていた、純然たる才能でのしあがった人物だ。

 ガンジー氏は自分の考えが定まっていないように見える――自分が権力を望んでいるかどうかさえ、分かっていないかもしれない。モディ氏のグジャラート州首相としての実績は、同氏が経済発展に力を注ぎ、それを実現できることを証明している。ガンジー氏の連立政権は、腐敗にまみれている。対するモディ氏はクリーンだ。

 従って、称賛すべき点は多くある。にもかかわらず、本誌(英エコノミスト)には、次期インド首相としてモディ氏を支持することはできない。

モディ氏の汚点

 その第1の理由は、2002年にグジャラート州で起きたイスラム教徒に対するヒンドゥー教徒による暴行事件だ。アーメダバードと周辺の町や村で、すさまじい殺人とレイプがあり、1000人以上が殺害された。この暴行は、イスラム過激派と見られるグループにより列車が放火され、ヒンドゥー教徒59人が死亡した事件に対する報復だった。

 モディ氏は1990年に、アヨディヤにある聖地でのデモ行進の組織化に手を貸し、それが2年後に、死者2000人を出したイスラム教徒とヒンドゥー教徒の衝突につながった。

 モディ氏は若い頃からヒンドゥー至上主義を掲げる民族義勇団のメンバーで、その信念に従って生涯独身を誓っており、政治家としてのキャリアの初期には、イスラム教徒に対するヒンドゥー教徒の憎悪を臆面もなく煽る演説をしていた。グジャラート州首相を務めていた2002年の暴動時には、虐殺行為を黙認したと非難され、扇動したとさえ言われた。