(英エコノミスト誌 2014年3月29日号)

超低金利と決別するためには、インフレ昂進が必要かもしれない。

 一見すると、先進国の中央銀行は別々の道を歩んでいるように見える。堅調な成長を示す統計に励まされ、イングランド銀行と米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和政策からの出口に向かって足を引きずりながら歩いている。市場はジャネット・イエレン氏のFRB議長としての初の声明を予想外にタカ派的だと受け取った。

 対照的に、欧州中央銀行(ECB)は、金融緩和に向けて舵を切っている。ブンデスバンク(ドイツ連邦銀行)のイェンス・バイトマン総裁は3月25日、ユーロ圏の経済をデフレの手から遠ざけておくためには、ECBはもっと力強い対応を講じる必要があるかもしれないと述べた。

当面続く低金利

 だが、もう一度見てみると、これから先の道のりは先進国全体で似通っているように見える。低金利がこの先、見通せる限り広がっているのだ。この見通しが最も明白なのが欧州だ。欧州では、ECBがデフレを回避するための方法としてマイナス金利を試すかもしれない。

 しかし、米国や英国でも、「通常」の金利は遠い先の可能性だ。イングランド銀行のマーク・カーニー総裁は2月、やがて来る金利上昇は徐々に起き、危機以前の水準を下回るところで横ばいになると断言した。

 イエレン議長も3月19日、同じような指針を示した。市場は、両国の短期金利が2017年初頭でもまだ2%程度にとどまると見ている(図1参照)。ユーロ圏は2020年まで、この水準に到達しない見通しだ。

 正常化が地平線の方向に遠ざかるなか、各国の中央銀行総裁は公然と低金利のコストについて不満をこぼしている。FRBのダニエル・タルーロ理事は2月、投資家が「利回りに手を伸ばしている」ため、低金利は投資家に危険なリスクを取るよう促すかもしれないと述べた。

 さらに気掛かりなことに、低金利の結果、将来のショックに対するクッションがほとんど存在しない。FRBの主要政策金利は、2001年の景気後退が始まった時は5%、1990年の景気低迷が始まった時は8%だったのに対し、2008年にリーマン・ブラザーズが破綻した時点ではわずか2%だった。

 だが、金利は正当な理由があって低くなっている。経済は信用(クレジット)の値段が上がることに耐えられないのだ。各国中央銀行は、主要政策金利に対する2つの下落圧力要因と戦っている。1つは、経済をフル回転させておくために必要な最低水準の実質金利(つまりインフレ調整後の金利)だ。この「自然な」金利は、長期的な構造的傾向によって下に引っ張られてきた。