(米「パシフィックフォーラム CSIS」ニュースレター、2014年22号)

By Victor Cha

 ロシアのプーチン大統領はアジアにとって危険な存在である。そのわけを説明しよう。

 2008年当時首相であったプーチンが行ったグルジア侵攻や今回のウクライナの出来事はあからさまな侵略的行為である。クリミア半島に軍隊を配置することは他国の主権侵害であり、分裂以前にソ連が味わっていたある種の優越感を回復するというプーチン大統領の思惑の表れである。

 確かに、先週末に行われたクリミアでの住民投票は、民族自決という意味ではロシアの行為を正当化させている。しかし、これは明白な国際ルール・規範違反である。

 最も苛立たしいのは、アメリカにはこのような行為に対抗する術がほとんどないということである。アメリカ政府はロシアを非難することや、クリミアでの住民投票の承認を拒否することができる。また、アメリカは制裁を強く要求することもできるし、ウクライナの指導者をホワイトハウスに招き彼らと写真を撮ることもできる。しかし、結局のところロシアは欲しいものを手にするのだ。その主な理由は、ロシアはこの問題に高い次元で関与しているが、アメリカはそうでもないからである。アメリカには、クリミアを巡ってロシアと戦争するつもりはない。

プーチン大統領の行為が悪しき先例に?

 それでは、これがなぜアジアにとって重要なのだろうか。

 クリミア半島はほとんどのアジアの人々にとってあまり興味のない遠い場所である。しかし、プーチン大統領がアメリカには決意や深い関心がないと認識し、その認識に基づいてクリミア併合の既成事実化を成し遂げることができるとしたら、同じように考える他の指導者たちをどうやって阻止できるだろうか。

 なぜ、習近平が主張するもう1つの防空識別圏の設定に関して同じように考えてはならないのか。また金正恩が、黄海での今までの行動が自分に有利に働くのではないかと考えることがなぜいけないのだろうか。