(英エコノミスト誌 2014年3月29日号)

台湾の学生が中国との自由貿易協定に抗議して国会を占拠した。

台湾国会を学生らが占拠、中国との貿易協定に反対

中台間の「サービス貿易協定」を審議していた台湾の立法院を占拠した学生や活動家たち〔AFPBB News

 台湾の国会である立法院は、騒々しい場面には慣れっこだ。しかし、3月18日から続く、抗議を行う学生たちによる議場占拠は、台湾に完全な民主制が導入されてから20年近くの間でも前例のない事態だ。

 その行動が多くの人々を驚かせたデモ隊は政府に、中台間のサービス貿易の自由化を進める内容の、中国との間で結ばれた協定の撤回を求めている。

 議場に掲げられた馬英九総統の大きな風刺画は、総統を中国の手先として描いている。馬総統の人気はどん底まで落ちており、一方の中国も台湾の世論を味方につけられないでいる。議場を占拠した学生たちに一般国民が共感を抱いていることを示す兆しも増えている。

 最後の任期となる2期目の4年間の半分近くが経過した馬総統にとって、過去数カ月は特に厳しい状況だった。2013年9月に、馬総統は与党・中国国民党内の政敵で立法院長を務める王金平氏を、職権を用いて便宜を図ったかどで党籍抹消処分にしようとした。しかしこの行動は、党内の分裂を際立たせるだけに終わった。

 学生が立法院に突入した翌日の3月19日、台北の地方裁判所が王氏の主張を認める判決を下し、王氏は当面の間、党籍、ひいては立法院長の職を維持することとなった。この一件は、馬総統にとってはさらなる打撃となった。批判派は、馬総統に独裁傾向を持つ高慢な支配者という印象を持たせようとしている。

中国企業の流入や自由の侵害を懸念

 馬総統の印象悪化の主な原因は、2013年6月に馬政権が中国と合意した協定だ。これは、銀行業務、電子商取引、医療などのサービス分野における両国間の貿易障壁を取り除こうとするものだ。馬総統はこの協定について、自身が総統に就任して以来取ってきた、融和的な対中アプローチへのご褒美と見ている。

 立法院を占拠している学生、ならびにこれらの学生を支援している野党は、この貿易協定は中国企業の流入を招き、競合する台湾企業は飲み込まれてしまい、出版などの分野で基本的自由が侵されかねず、台湾人の代わりに中国本土の安い労働力が雇われることになると主張する。反対派はさらに、馬政権は協定の条件交渉について秘密主義すぎると批判している。

 学生が占拠を始めてから3日後、馬総統は、立法院が協定を承認できなければ「重大な結果を招きかねない」と主張した。協定を撤回すれば、中国だけでなく、台湾が自由貿易協定の交渉を希望している他の国からも「貿易相手国として信用ならないと見なされる」結果になるかもしれないというのだ。

 総統は、協定により台湾の労働市場が中国の労働者に開放される可能性を否定し、国家の安全保障が脅かされる事態になれば再び貿易障壁を築くだろうと語った。