(英エコノミスト誌 2014年3月15日号)

暗号通貨ビットコインが「お金のインターネット」になる可能性

 子供の葬儀に間に合うタイミングで父親が見つかった――。最近のマスコミ報道を信じるのであれば、これが暗号通貨ビットコインの世界で起きているお粗末な事態のように思えるだろう。

 ニューズウィークは3月6日、なかなか見つからないビットコインの考案者、サトシ・ナカモト氏を突き止めたと報じた。そして3月11日、マウントゴックス――現在の価格にして4億9000万ドルに上る顧客のビットコインを失うまで、長期にわたり同通貨の取引を牛耳っていた日本のオンライン取引所――がもう1度、今度は米国で破産法に基づく資産保全を申請した。

「ビットコイン考案者」報道を公式否定、ナカモト氏

AFPBB News

 実際には、状況はかなり異なる。ニューズウィークがビットコインの父と断定したドリアン・サトシ・ナカモト氏が実は問題のサトシではないことを示す証拠が積み上がってきた。

 それ以上に重要なことに、ビットコインの最盛期はまだ先に待ち受けている可能性がある。完全な通貨としてではなかったとしても、金融イノベーションのプラットフォームとしては前途が明るいかもしれないのだ。

 インターネットがデジタルサービスの基盤であるように、ビットコインを支える技術は、モノの所有や代金支払いのあり方の革命を後押しできるかもしれない。あらゆるタイプのハイテクオタクや専門家が胸を躍らしており、その中には、新たなプラットフォームを見ればそれと分かるベンチャーキャピタリストも増えている。

ヤップ島の巨大石貨とビットコイン

 この近代的な通貨に対する情熱を理解するためには、大昔の通貨に思いを巡らしてみるといいだろう。20世紀初頭まで、西太平洋に浮かぶヤップ島の人々は、例えば娘の結婚持参金などの大きな出費を払うお金として、石でできた大きな円盤を使っていた。石貨は非常に重いことから、使われた時に実際に移動させることはほとんどなかった。

 その代わりに、単に所有者が代わった。すべての取引が所有権の口述歴史の一部となり、そのおかげで島の人々は、一つひとつの石の持ち主を把握できるようになり、同じ石を2度使うことは難しかった。

 ビットコインも、送金された時にあちこち移動することはない。ビットコインは「ブロックチェーン」と呼ばれる巨大な台帳の記録として理解するのが一番いい。この台帳には、流通しているすべてのビットコインの取引履歴が収められており、何万台ものコンピューターの世界ネットワークによって提供される暗号と莫大な計算能力の助けを得て最新の状態に保たれている。