「日本を売り込め!」――。観光しかり貿易促進しかり、上海で日本をPRすることは、日本の自治体にとって重要な取り組みの1つになっている。だが現実は、「スローガンだけ」「予算を垂れ流すだけ」のところも。効果測定もなされないままに、お粗末なPR活動が繰り返されている。

 6月28日から1週間、神奈川県横浜市は上海市内の梅龍鎮広場で横浜ブランド展「横浜ウイーク2010」を開催した。目的は中国市場における販路開拓である。横浜市の呼びかけに市内の26事業者が応じ、この展示商談・販売会に出展した。

とても魅力的な展示空間とは言えない横浜ブランド展「横浜ウイーク2010」(筆者撮影、以下すべて)
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 自治体の中でも「感度が高い」と定評の横浜市だが、筆者は200平方メートルの展示即売会場を訪れて、愕然とした。

 ロの字型に囲った二段重ねのひな壇にブルーのクロス、その上に無造作に並べられた商品群。残念ながらその展示の様子はどう見ても横浜ブランドにはふさわしくなく、まるで「文化祭のバザー会場」のような様相だった。

 キタムラK2のバッグ、近沢レースの美しいレース小物、大佛次郎の小説『霧笛』に由来する霧笛楼の洋菓子・・・、どれもが高価でセレブな商品であるにもかかわらず、その価値がまったく伝わっていない。それどころか、かえって老舗ブランドの価値を失いかねない陳列になってしまっている。

 小売りにおける、商品の陳列・展示方法の重要性は言うまでもない。商品の魅力や特色が最大限に伝わる空間作りが成されなければ、ブランド価値を殺してしまうことにもなりかねない。

当初は横浜の街を上海で再現する予定だった

 集客も、期待したほどの伸びはない。当世、上海の居住者はこうしたイベントには目が慣れていて、よほどの仕掛けがないと足を止めないのだ。

 当初の来場見込みは1週間で10万人、1時間当たりでは1100人の計算だった。しかし、その半数の5万人の来場にとどまった。

 国内市場が縮小する中、横浜ブランドも早晩成長が頭打ちになることは目に見えている。その危機感から、行政は早い段階で地元企業の背中を押し、中国市場に目を向けさせてきた。

 中期目標も存在した。それは、2012年にオープン予定の高島屋上海店での横浜コーナーの開設である。今回の「横浜ブランド展」は企業にとってマーケティングの絶好の機会でもあった。