『レ・ミゼラブル』(2012)のコゼット役などで知られる人気女優アマンダ・セイフライドが「伝説のポルノスター」を演じる『ラヴレース』(2012)が現在劇場公開中である。

 そのスターとはリンダ・ラヴレース。しっかりとしたコンセプトを持つ初のハードコア作品と言われる『ディープ・スロート』(1972)に出演、1960年代末から進む「性の革命」のシンボルともなった女性である。

米大統領を辞任に追い込んだ「ディープ・スロート」

ラヴレース

 セイフライドは大胆な演技を見せているが、ポルノチックな演出はなく、「Girl next door」が業界入りするまでの紆余曲折の道のりを描いたドラマとなっている。

 1972年6月12日、ニューヨークの「ワールド・シアター」でプレミア公開された『ディープ・スロート』は、ポップなコメディタッチもあって、社会現象とも言える大ヒットとなり、ラヴレースは一躍スターとなったのである。

 その公開から間もない6月17日、ワシントンD.C.のウォーターゲートビルにある民主党選挙本部委員会オフィスで、不法侵入と盗聴器設置容疑で5人が逮捕される事件が起きた。

 ワシントンポスト紙記者ボブ・ウッドワードは、同僚カール・バーンスタインとともに独自の調査を始めた。その時、ウッドワードの情報源となったのが「ディープ・スロート」と呼ばれる謎の人物。

 情報提供者の公表を避ける「ディープ・バックグラウンド」の意をも暗にこめ「時の映画」の名を同社の編集局長がつけたのだった。

 「報道の自由」の精神にのっとり、重ねるスクープが事件解明を加速させていくさまは、のちのウッドワードの著書「大統領の陰謀」、そして、ロバート・レッドフォードがウッドワードを演じるその映画化作に詳しい。

 「事件は政権とは無関係」と表明し続けた時の大統領リチャード・ニクソンは、11月7日の大統領選で、地すべり的大勝利を収める。しかし、1973年1月に始まった侵入犯の裁判では、大統領再選委員会との関係が露見、上院にウォーターゲート特別委員会が設置されることになる。

 その頃、ニューヨークでも裁判が始まっていた。強制捜査で閉鎖勧告を受けたワールド・シアターがそれを拒否、12月に裁判となっていたのである。しかし、皮肉にも、判断が下されるまでの間、観客は激増した。