(英エコノミスト誌 2014年3月8日号)

ウクライナ危機を解決するためには、ドイツは電話で働きかける以上のことをする必要がある。

独首相、スキー中に骨折 公務一部キャンセル

アンゲラ・メルケル首相は欧州最強の指導者だが・・・〔AFPBB News

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は多くのドイツ人と同じく、ロシアに対して疑念と感傷の両方を抱いている。

 一方では、共産主義国だった旧東ドイツ出身の初の首相として、ソビエト連邦の遺産や、ドレスデンで活動していた元KGB職員であるウラジーミル・プーチン大統領の本性について、幻想はほとんど抱いていない。プーチン大統領の過去の人権犯罪に対して、前任者たちより積極的に批判を表明している。

 その一方でメルケル首相は、プーチン大統領がウクライナを失うことを恐れる気持ちも理解している。メルケル首相の机の上には、エカテリーナ2世の肖像が飾られている。ドイツに生まれ、ロシア皇太子妃から後にロシアの女帝となり、クリミアを征服した人物だ。

ロシアのクリミア侵略に対するドイツの矛盾した反応

 こうした複雑な感情(戦後の罪の意識と、平和主義さえもそこに付け加えてもいいかもしれない)が、ロシアによるクリミア侵略に対するドイツの矛盾した反応を説明するのに役立つ。

 メルケル首相は欧州で最も強い力を持つ指導者だが、ドイツはこれまでのところ、欧米が対ロシアで一丸となって断固とした対応を取るにあたって最大の障害となってきた。米国がロシアを主要8カ国首脳会議(G8)から除外すべきだと提案した時、ドイツのフランク・ヴァルター・シュタインマイアー外相は反対した。

 東欧諸国が、明確な制裁を掲げて圧力を掛けることを望んだ時も、シュタインマイアー外相は、「外交は弱腰のしるしではない。以前にも増して外交が必要とされている」と述べ、対話を優先すべきとの主張を崩さなかった。

 シュタインマイアー外相を含め、ドイツ社会民主党(SPD)のメンバーは、以前からロシアに寛大な傾向があった。シュタインマイアー外相が師と仰ぐゲアハルト・シュレーダー元首相は、ロシアの天然ガス大手ガスプロムが牛耳るパイプラインコンソーシアム、ノルドストリームの株主委員会の委員長を務めさえした。

 だが、欧州連合(EU)が3月初めに緊急首脳会談を準備していた時、メルケル首相はシュタインマイアー外相の見解に異議を唱えることはなかった。ロシアと緊密な関係を築く必要は広く理解されている。ドイツの対応は、日刊紙ターゲスツァイトゥングが1面の記事で最も的確にまとめている。この記事では、青い電話の絵に「欧州の最も強力な武器」という見出しが付けられた。

 外交官たちの話では、メルケル首相こそが誰よりも「外交交渉網の中心」に位置し続けてきたのだという。プーチン大統領に電話し、交渉グループを立ち上げて国際監視団を配備するように求め、ロシアがクリミア支配をあきらめるか、少なくともウクライナ東部に手を出さないことを期待しているとのことだ。