(英エコノミスト誌 2014年2月15日号)

オフランプに向かうトヨタの動きは、大事にされてきた産業の終焉を示唆している。

 1948年にオーストラリア初の国産車「ホールデンFX」の生産が始まった時、その快挙は先進国入りを果たしたばかりの若々しい国のシンボルに相応しい興奮で迎えられた。国産車に対する熱狂はすさまじく、およそ1万8000人の顧客が事前に現物を見ることもなく前金を支払ったほどだ。

 フォード・モーターやホールデンに続き、2017年に組み立てラインを閉鎖してオーストラリアでの自動車生産から撤退するというトヨタ自動車の2月10日の発表は、それと同じくらい大きな落胆をもって迎えられた。

 だが、お決まりの政治責任の擦り合いの裏には、あらゆる条件がオーストラリアでの自動車生産に不利になったとの認識があった。国内に残る最後の大手自動車メーカーの撤退は、バーベキューの席上でフォードとホールデンの良さを巡る議論になるのと同じくらい避けられないことだった。

 三菱自動車は6年前にアデレード工場を閉鎖した。直近の撤退の波が始まったのは昨年5月、フォードが2016年にオーストラリアから撤退すると発表した時のことだ。クリスマス直前には、ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のホールデンが2017年に生産を中止すると発表した。

必然的な衰退

 自動車産業は長年、衰退し続けてきた。今から10年前には、オーストラリアは自動車を年間40万台生産していた。それが2013年には、20万台余りにとどまった。

 オーストラリア国内の自動車販売台数は2013年に過去最高の114万台に達したが、同国市場は世界的には規模が小さいうえ、最も人気の高い3車種でも販売台数がそれぞれ4万台ずつと、市場が細分化されている。しかも残念ながら、3車種のいずれも国内で組み立てられていない。

 オーストラリアは間違った種類の車を生産している。大半の先進国と同様に、ドライバーは燃費の良い小型車やおしゃれなSUV(スポーツ用多目的車)を好むようになっている。にもかかわらず、国内で生産されている6車種のうち、その分類に入るのはホールデンの「クルーズ」とフォードの「テリトリー」の2車種だけだ。

 利幅が小さい安い大衆車にとっては、低コストな大量生産が不可欠だ。だが、オーストラリアの工場は規模が小さい。最も規模の大きいトヨタの工場でさえ、年間生産台数はたった10万台だ。原則として、大衆車を生産する工場は、十分安く車を生産するためには、少なくとも年間20万台生産する必要がある。

 オーストラリアの工場にはスケールメリットがないが、高給取りの従業員には事欠かない。同国の自動車労働者以上に稼いでいるのは、ドイツの自動車労働者だけだ。規模の欠如は地元の部品メーカーにも及んでいる。部品メーカーも国際標準からすると小さいため、部品は割高になる。フォードとホールデンによれば、その結果、オーストラリアの製造原価はアジアのそれの4倍、欧州の2倍に膨れ上がるという。