リクルートワークス研究所の主任研究員・石原直子氏

 ただ一方で、従来の雇用システムにもその一因はあるようだ。

 「日本は長期雇用が一般的です。ですから、どうしても昇進を決める条件の背景には『その企業で長く貢献しているかどうか』を重視する傾向があります。多くの女性は、出産や育児というライフイベントにより、長く第一線を離脱する時期が出てきてしまうのです。従来の雇用システムでは、再度企業の基幹ポストを目指せる環境があまり整っていないため、たとえそのあと職場に復帰しても、長く職場を離れた、第一線から退いた、という事実がネックになってしまうのです」(同)

 女性の両立支援が進み、出産や育児というイベントを迎えても退職しなくて済む環境がつくられてきた。今後は、産休や育休により年単位で職場を離れても、その後再び第一線で活躍し、昇進もしていけるシステムをつくることが必須になるはずだ。

「2年1単位」で社員ごとのキャリアを明確化

 リクルートワークス研究所は、2013年11月に「提案 女性リーダーをめぐる日本企業の宿題」という提言書を発表した。そこには、女性リーダー育成の課題を解決するための16の提言が載っている。

 産休・育休を見越した提言も多い。例えば、「『2年1単位』で経験をモジュール化」「標準5モジュールで管理職へ」という2つの提言もその類だ。

 「これはキャリアのサイクルを明確にすることが狙いです。2年というのは、プロジェクトの区切り、あるいは仕事を覚えて成果を出すまでの期間として適切な長さ。そこで2年を1単位とし、5単位分の成果を積み上げたら管理職に登用することができる、というようにキャリアパスを設計します。こうすることで、1単位ごとに、どのようなゴールに到達すべきかが明確になるため、例えば産休・育休していた女性社員が復帰した際に、それまでの実績・経験がゼロリセットされなくなるのです」(同)

標準5モジュールの考え方
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 また、出産・育児というライフイベントは30歳前後で発生することが多いという現状に鑑みて、入社から5年をより有効活用し、スタートダッシュで成長を先取りさせ、27歳からはリーダー職を経験させることなども、提言として挙げられている。