(英エコノミスト誌 2014年2月15日号)

和食界の大物たちは、日本料理に外国の影響が及ぶことに寛容になりつつある。

 ミシュランガイドで三ツ星に輝く水谷八郎氏は、世界一流の寿司職人の1人だ。水谷氏は、白米に鯖、平目、鮪などを載せて寿司を握ることに自信があるのと同じくらい、和食の未来に自信を持っている。この寿司を目当てに、東京・銀座にある水谷氏の寿司店に通うファンは途切れることがない。

 日本の若者は洋食を食べることが増えているかもしれないが、年を取るにつれて、必ず健康的な和食に戻るものだと水谷氏は語る。同じように、外国人は日本国外の模擬的な回転寿司店から和食に入るが、すぐに本物を求めるようになる――というのが、東京の天才料理人のファストフードに対する見方だ。

「寿司ポリス」の時代は終わり

外国人観光客に人気の日本食1位は「すし」、2位「ラーメン」

寿司は世界的に人気の高い和食〔AFPBB News

 これは、最近まで一部で聞かれた和食に関する妄想に近い考えとはまるで違う。

 2006~07年に、農林水産省は伝統的な和食の劣化を取り締まるためにいわゆる「寿司ポリス」を海外に派遣する制度を考え出した。コロラド州の自称日本料理店が、韓国式焼肉と一緒に寿司をメニューに並べることは、特に甚だしい侵害と見なされた。

 日本政府は賢明にも反発を恐れて、この制度を廃止した。食のファシズムは馬鹿げている。典型的な和食と考えられている料理の中には、外国に起源があるものも多い。日本の主婦が大量に食卓に並べる、豚肉と野菜が入った「餃子(ギョウザ)」は、基本的には中国の「餃子(ジャオヅ)」であり、1931年からの満州占領期に日本に普及したものだ。

 日本のラーメン店はロンドンとニューヨークで大流行しているが、その麺は中国の「拉麺」(中国語で引っ張られた麺のこと)だ。では、皿に盛った白米の上にカレーソースをたっぷりかけ、ポークカツレツを載せた日本の国民食「カツカレー」はどうか。この奇怪な食べ物が他国に存在しないのは事実だが、中国人が豚肉を、また英国人がカレー粉を日本人の食生活に広めなければ、このメニューは生まれていなかったろう。

 東京のレストランがロンドン、ニューヨーク両市を合わせた数よりも多くミシュランガイドの星を獲得している今、日本の官僚も警戒を解いている。政府は今から2年前、季節を基本に据える日本の伝統的食文化「和食」を「無形文化遺産」としてユネスコ(国際連合教育科学文化機関)に登録申請した時に、外国人が和食に影響を与え、作り変えてきたことを認めた。

 京都を中心に活躍している料理人で、和食の無形文化遺産登録に尽力した村田吉弘氏は、寿司ポリスの時代は終わったと断言する。昨年12月に和食がユネスコの認定を受けた頃、村田氏を主人とする料亭「菊乃井」は初の外国人見習い料理人を受け入れようとしていた。日本はこれまで、外国料理の調理に関してのみ外国人シェフに就労ビザの発行を認めてきた。今では日本料理を学んでほしいと考えている。