AsiaX(アジアエックス)2014年01月01日

 天高く舞う鷹や鷲――中央アジアやモンゴル高原が起源と伝えられている鷹狩を、シンガポールで披露しているところがあります。カラフルな鳥たちの楽園として観光客にも人気のジュロン・バードパークの猛禽類のショー、その名も「Kings of the Skies」。

 食物連鎖の頂点に立つ、肉食の猛禽類を巧みに扱う人と鳥たちが見せる凛々しくかつ迫真の技が繰り広げられています。

予測不可能な野生動物との間に築く信頼関係

鷹狩が禁じられているシンガポールで鷹や鷲の帆翔を見ることができるのは、バードパークだけ。自然が失われていくなかで、この伝統や技法がこのバードパークで次世代に引き継がれていく。(写真はハクトウワシ)

 古来、モンゴル高原の遊牧民、カザフ族は鷹や鷲を使って狩りをしていました。雛のときから鷹匠に育てられた鳥たちは、育ての親である鷹匠のパートナーとして狩猟民族には欠かせない存在でした。

 猛禽類はその優れた視力で、はるか遠く地上を走るウサギやキツネなどの動物を見つけ、猛スピードで急降下し、鋭い口ばしや鉤爪(かぎづめ)で鷲掴みにして捕獲します。

 恐怖感を与えるシーンですが、大空を優雅に帆翔する姿は美しくもあり迫力があります。いまでは鷹狩は伝統文化として、モンゴルをはじめ11カ国でユネスコの無形文化遺産に指定されています。

 現在ショーで見られる猛禽類は、鷹、鷲、フクロウ。もともと野生であったり、他国から搬送されてきたりとさまざまな背景や性格を持つ鳥たちです。

子どものころから鳥が大好きだったというクラレンスさん。「昔は、セントーサに行って上空を舞う鷹や鷲の姿を見たものです。開発で変わり果ててしまった今、自然に舞う猛禽類の姿はすっかり見かけなくなってしまいました」。彼の腕に乗るオジロワシの「ジュニア」は、体重3.6キロ、翼を広げた全長は1.8メートル。その存在感は圧巻。

 調教の前に、最初にしなければならないのは、鳥の信頼を得ること。鷹匠として、またショーのプレゼンタ―として25年も活躍するベテランのクラレンスさんは、「鳥の信頼を勝ち取ることが最も大切ですが、実はこれが一番難しい」と語ります。

 鳥の信頼を得るためにまず、何もせず鳥のそばにただ座って15~20分過ごします。最初は興奮して奇声をあげたり、威嚇したり、飛び回ったりしても、決して動じず、忍耐強く待つだけ。

 それを何度も繰り返すことによって、次第に鳥たちはその人間が敵でないと判断するようになり、その人間の存在にも少しずつ慣れていくそう。

 一旦、鳥との間に信頼関係が生まれると、調教もスムーズに行うことができます。とはいえ、もちろん調教にも根気が必要です。一般的に調教の期間は、鷹や鷲で1~1カ月半程度、気が散りやすく集中できないフクロウは、3カ月ほどかかるのだそうです。