2月7日から始まったソチ五輪。熱闘を繰り広げているのは選手ばかりではない。場外では日中両首脳が火花を散らした。ロシアのプーチン大統領をめぐる綱引きもさることながら、神聖なるスポーツの祭典を“日本包囲網の好機”とばかりに、露骨に政治利用しようとする中国のやり方は目に余るものがあった。

 習近平国家主席のソチ滞在は43時間だったが、その間に12のアポイントを取り付け、プーチン大統領ほか、国連の潘基文事務総長やアフガニスタンのハーミド・カルザイ大統領、ギリシャのカロロス・パプーリアス大統領やチェコのミロシュ・ゼマン大統領との会談を持った。さらにはロシアのテレビ局からの取材も受けた。

 中露首脳会談は、日露首脳会談よりも2日早い2月6日に行われた。40カ国以上の首脳が集まるなか、中国はロシアとの最初の会談を取り付けたのだ。会談ではシルクロード経済ベルトを中心とした経済関係の強化に話が及び、ロシア側も石油開発、核エネルギー開発、航空宇宙などの領域における中国の協力への期待を示した。

 他方、潘基文事務総長との会談では「2015年は連合国成立70周年であり、世界反ファシズム戦争と中国人民抗日戦争勝利70周年でもある」とし、「連合国は国際社会に向けた記念活動をプッシュすべし」と呼びかけた。習近平氏は日本を包囲し、孤立させることも忘れなかったのだ。

 こうした中国による日本包囲作戦は、すでに2013年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝以降、徐々にトーンを強めている。おそらくロシアのテレビカメラに向かっても日本バッシングを展開したことだろう。

 一方で、「安倍晋三首相の訪露はロシアで好感されている」(産経新聞)とも伝えられた。40カ国以上の首脳が集まるなか、プーチン氏は安倍首相との会談後に昼食会を用意したのだ。これに日本メディアは敏感に反応し、プーチン氏が習近平氏とは食事をしなかったことから、「日ロ首脳間の信頼関係の深まり」(朝日新聞)と前向きに解釈した。

 しかし現実は、経済協力は進展を見せるものの、北方領土問題は依然日本に「譲歩」を迫るという厳しい情勢に変わりはない。