牛丼屋から牛丼が消えていく?

「脱・牛丼」でデフレ脱却か

2014.02.13(Thu) 小谷 隆
筆者プロフィール&コラム概要

 確かに、これは読者の方々が想像されるであろう牛丼とはかなり趣が違う。すき焼きがそのままご飯に乗ったものと思っていただければいい。割り下の甘みの中に肉や野菜の風味が溶け込んだ、まさにすき焼きそのものの味がご飯に染み出している。

なか卯の牛すき丼。2月12日から発売。並盛で350円

 なか卯にもともとあった「和風牛丼」もそれに近い風味ではあったのだけれど、そこにはどこか一般的な牛丼から離れすぎないための「調整」があった。しかし今度の「牛すき丼」はいっさいの遠慮も衒いも排除した、すき焼きそのものの味なのである。

 そもそも牛丼は明治の頃、余った牛鍋をご飯の上にかけて食べたのが起源とされている。しかし、今の世の中で牛丼と呼ばれているものはその元祖とはかなり違ったものに進化している。

 牛鍋から袂を分かって百幾年、具材は牛肉とタマネギというシンプルな組み合わせになり、その具材の切り方も鍋の具としてよりも丼として最適な大きさや形に変化していった。タレは甘みを残しながらも、より食欲をそそるべく様々なスパイスが加わり、シンプルな具材を最大限に生かす和風ファストフードとして独自の地位を築くに至った。それが当世の牛丼だ。

 だからなか卯が世に問うこの昔返りの「牛すき丼」はいわゆる「牛丼」とは明らかに一線を画すものなのである。

 価格は350円。旧来なか卯にあった「和風牛丼」が290円だからちょっと割高感はある。しかし350円でもなお世の食べ物としてはかなり安い部類だ。この豊富な具材と満足感からすれば相当なお値打ち感のある一品と言えるだろう。

 牛丼業界ではどちらかといえば地味な存在だったなか卯。足元の業績は好調らしいのだけれど、この挑戦が果たして吉と出るか凶と出るか。

勢力図を大きく変えたBSE問題

 実はなか卯に限らず、牛丼界全体にも異変が起きている。いま牛丼屋がこぞって「脱・牛丼」に勤しんでいるのだ。

この連載記事のバックナンバー
トップページへ戻る

企業コミュニケーションのプロとして働く傍ら、音楽制作と文筆活動。24時間イン ターネット音楽ラジオ「これい~なNon Stop Music Station」を主宰。87年コバルト 短編小説新人賞、93年新美南吉童話賞を受賞。90年代に草創期のマイクロソフトネッ トワークでコラムを執筆。愛知県生まれ。


食の万華鏡

食の安全に対して国民の関心が高まっている。今後、安全で美味しい食の供給国としての日本を考えた時にもこの問題は重要になる。食の安全の話題を中心に、食トレンド、食品マーケットなど、食にまつわる様々なテーマを取り上げる。