(英エコノミスト誌 2014年2月1日号)

内閣は総辞職したが、反政府派の抗議者たちは挑むように路上にとどまっている。

 ほんの数週間前だったら、ウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領による内閣の解任と野党指導者を新首相に任命するという大統領の申し出は、電撃的な効果を持っていただろう。重要な勝利としてキエフの独立広場(マイダン)の抗議者たちに喝采されていたはずだ。首都キエフの道路の障害物を取り除くようデモ隊を納得させていた可能性さえある。

 もうそうはいかない。ヤヌコビッチ大統領は1月28日、長く務めたが無力だったニコライ・アザロフ首相をようやく解任した。だが、首相解任に対し、キエフでバリケードを張る人たちはただ肩をすくめただけだった。野党指導者のアルセニ・ヤツェニュク氏は、首相就任の要請を拒否した。2日後には、ヤヌコビッチ大統領自身が不可解な病気休暇を取っているとのニュースが流れた。

 これはプレッシャーが大統領を苦しめている兆候かもしれない。だが、それと同じくらい可能性が高いのは、ヤヌコビッチ大統領が身を潜めて、デモ弾圧のために兵力を結集させていることだ。

「英雄たちに栄光を、敵に死を

キエフで散発的な衝突、緊迫した状態続く

ヤヌコビッチ大統領はデモ弾圧に動くのか?〔AFPBB News

 1月末までの10日間でバリケードは高くなり、場所は政府機関にさらに近づいている。バリケードは燃え尽きた警察車両の残骸や土嚢で要塞化され、今では飾り物のようには見えず、むしろ戦争の前線のように見える。

 1月22日の警官隊との激しい衝突の後、雰囲気はより好戦的で重苦しくなっている。新たな境界線を護衛している人たちは、安全ヘルメットをかぶり、戦時の規律を保っている。抗議者たちが互いに呼び掛けるスローガン――英雄たちに栄光を、敵に死を――は、不安になるほど真剣に聞こえる。

 バリケードの反対側の「敵」は、装甲人員運搬車に守られた数百人の機動隊だ。1月後半の2週間に衝突で少なくとも5人が死亡し、さらに20人が行方不明になっている。負傷者のほとんどは政府側の悪党に誘拐されることを恐れて病院に行くのを拒んでいるため、負傷者の正確な数は分からない。

 1月最終週には男性2人が病院から連れ去られた。後に死体で発見された1人には、拷問された形跡があり、顔に粘着テープが貼られていた。もう1人はこっぴどく打ちのめされたが、生き残った。週半ばまでは、さらなる実戦の場面は見られなかった。代わりに、両側とも互いをただ監視していた。だが、休戦状態だからと言って、対立が終わったわけではない。

 内閣総辞職を認め、そもそも衝突を招いた、抗議行動を規制する独裁的な法律をヴェルホーヴナ・ラーダ(最高議会)に撤回させることにヤヌコビッチ大統領が同意したことは、さらなる戦闘が避けられるのではないかという幾ばくかの期待を抱かせた。デモ隊は、数日前に占拠していた政府庁舎の一部から退去している。戒厳令のリスクは、完全に消滅したわけではないものの、低下している。