(英エコノミスト誌 2014年2月1日号)

中南米で最も弱い経済国2カ国が限界に達しようとしている。

 ユーロ危機の真っ最中、経済が不振な欧州諸国は判で押したように、自分たちはギリシャのような特殊例ではないと主張した。自国の苦悩がどのようなものであれ、ギリシャの苦悩は別格だと断言していた。一方、中南米には、特殊例というこの不名誉な称号を争う国が2つある。アルゼンチンとベネズエラだ。

 両国とも、長年にわたり羽振りがよかった。またとないコモディティーブーム(ベネズエラは石油、アルゼンチンは大豆)で得た利益を気前よく使ってきたのだ。両国とも、実態に比べて高すぎる為替レートが下落するのを防ぎ、インフレの昂進を防ぐため、中央銀行による介入と政府による通貨統制を行ってきた。そして両国は今、当然の報いに直面している。

高インフレと過大評価された通貨

 高インフレ率は両国共通の問題だ。アルゼンチンのインフレ率は金融、財政の緩和政策により加速しており、非公式な調査ではインフレ率は28%に達する。その結果、公式な為替レートは過大評価されており、1月中旬時点で、1ペソ当たりのドル相場は非公式の「ブルー」レートより70%も高かった。

 ベネズエラの物価上昇率はさらに大きい。ウゴ・チャベス前大統領の死去からニコラス・マドゥロ大統領への順調とは言い難い政権移行が進められていた2013年、中央銀行は公共支出を賄うために紙幣を増刷し、インフレ率を56.2%に押し上げた。闇市場の為替レートは1ドル=75~80ボリバルと、公式レートの7倍にも達する。

 また両国とも、過大評価された自国通貨を防衛するための武器が目減りしている。

 金と外貨を合わせたベネズエラの準備高は2012年末時点で300億ドル近くあったが、今年1月下旬には210億ドル余りまで減少した。そのうち、流動資産はわずか20億ドル程度だ。

 ベネズエラの調査会社エコアナリティカの推定によれば、そのほか政府が使える資金として予算外の不透明な基金が130億ドルほどあるという。アルゼンチンの外貨準備高も急激に落ち込んでいる。

 こんな状況が続くわけがなく、1月下旬、変化が起きた。アルゼンチンはまず1月20日からの1週間でペソが15%以上下落するのを容認し、次に、預金を目的とした外貨購入の禁止措置を緩和すると発表した。

 月収7200ペソ(900ドル)以上の国民は、アルゼンチンの国税庁に当たるAFIPの許可を得れば、給与の20%を公式為替レートでドルと交換できるようになった。ドルは現金で受け取るのではなく、銀行口座に入金される。1年以内に引き出す場合、20%の手数料が掛かる。複雑に聞こえるかもしれないが、要するに、これでも闇市場より安くドルを購入できるということだ。