(英エコノミスト誌 2014年1月25日号)

タイの統一そのものが危ぶまれている。

タイ政府支持派の指導者が撃たれ負傷、反政府派はデモ継続

バンコクでは大規模な反政府デモが続いているが、タイ北部や北東部のタクシン支持は根強い〔AFPBB News

 がっしりした体格でおしゃべりなカムシ・オードムシさんは、タイ北部の主要都市チェンマイの郊外にあるサンカムペーンという小さな街の屋根付きの市場で焼きバナナの店を営んでいる。

 揚げ物台の目の前の油まみれの壁には、チナワット一族のポスターやカレンダーだけが飾られている。2006年にクーデターで退陣に追い込まれ、現在は自主亡命中の元首相、タクシン・チナワット氏と、ドバイに住む兄タクシン氏の指示に従う現首相のインラック・チナワット氏のものだ。

 カムシさんいわく、タクシン氏の政策のおかげで、家族の将来展望が大きく変わったという。学生ローン制度によって、彼女の息子と娘は2人とも大学に進学できた。大卒は一族では初めてだった。現在、2人の子供の比較的給料のいい仕事がカムシさんの医療費をカバーする助けになっている。

 これに対し、カムシさんはタクシン氏とその妹に永遠の忠誠で報いている。彼女はタクシン氏の草の根の政治運動「赤シャツ隊」の創設メンバーの1人だった。

チナワット一族への永遠の忠誠

 このような話はタイ北部と北東部で幾度となく耳にする。タクシン氏の社会政策――政敵はこれを単なるポピュリズムだと一蹴する――がいかに人々が貧困から抜け出すことに役立ったかという話だ。

 チェンマイとその周囲の16県は、ほぼ赤シャツ一色の地域だ。タイの貧しい北東部20県――イサーンとして知られている地域――はそれ以上に真っ赤だ。献身の炎はサンカムペーン郡で最も激しく燃え盛っている。というのも、ここがチナワット家の出身地であり、一族はゆくゆくそこに帰還し、埋葬されるからだ。

 カムシさんと赤シャツ隊の同志らは、2月2日に予定されている総選挙を待ち望んでいる(インラック氏は、昨年11月から首都バンコクで続く政治的な膠着状態を打破しようと総選挙実施を決めた)。彼らは選挙で誓いを新たにし、赤シャツ隊と与党・タイ貢献党の支持者たちの力を再び見せつけられる。

 2001年以降、タクシン氏が率いてきた政党は、まさに北部および北東部の農村を支配することによって、すべての選挙を制してきた。