現在韓国で大ヒット中の映画がある。昨(2013)年12月18日に封切られ観客動員数は封切から3日間で100万人、32日間で1000万人を超え、1月26日には1056万人を記録した。題材は政治、その中心人物となるのは盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領である。

毀誉褒貶の激しい盧武鉉元大統領

映画『弁護人』のパンフレット

 韓国で彼に対しての評価は極端に分かれる。保守派たちは彼の人格から政策に至るまで徹底的に批判する半面、彼を慕う人たちはとてつもなく敬い、彼のいないこの世は真っ暗闇であるかのように表現する。

 正直この映画を見る前は、ノ・ムヒョン元大統領の追従者たちが彼らの論理で作った映画であり、どうせ彼を称えるためのものだろうと思っていた。

 だが、観客が1000万人を超えたとなると、一度見ておかねばなるまいという心理が働き、映画を見にいった。

 土曜日の夜という時間帯だからかもしれないが、封切られてから時間が経っているにもかかわらず映画館は満員であった。

 映画ではノ・ムヒョン元大統領の実名は出てこない。彼をモチーフにした主人公や実際の事件などがちりばめられているが、フィクションである。

 映画のシノプシスは、高卒で司法試験に受かり判事になったが、学歴社会の法曹界で差別が多く、判事を辞め弁護士になってお金儲けに専念する主人公。だが、行きつけのテジクッパ(豚のクッパ)店の息子が行方不明になり、調べていくと「釜林事件」と呼ばれる国家保安法違反事件で警察に捕まっていた。

 行きつけの店のおばさんの頼みでいやいや面会に付き合ったところ、彼女の息子は2カ月で10キロもやせ細り体のあちこちに拷問の痕があることを発見。時は軍事政権の真っただ中で、誰一人国家保安法違反で捕まった人たちを弁護しようとしない中で、彼は弁護人を買って出る。

 それまでの「デモをする奴らはみんな勉強したくないのでデモをやっている」という先入観を脱ぎ捨て、彼は軍事政権の不条理に立ち向かうが、最後のシーンでは彼もまた政権に歯向かったという罪で裁判にかけられる。