(英エコノミスト誌 2014年1月25日号)

懐かしい顔ぶれの1人は、ライオンハートその人だ。

東京都知事選が告示、2月9日投開票

都内で、東京都知事選の選挙演説を行う細川護煕元首相(左)と小泉純一郎元首相〔AFPBB News

 東京の最大の政治ニュースが合計年齢148歳の2人の年金受給者が下した隠居生活から復帰するという決断だというのは、奇妙に思えるかもしれない。しかし、そのうちの1人は小泉純一郎氏なのだ。

 2001~06年に首相を務めた小泉氏は実に稀有な存在だった。そう、支持率が高いうちに退任した、カリスマ性を備えた日本のリーダーだ。そして今、小泉氏が戻ってきて、世界最大にして最も裕福なメガロポリスを運営しようと競うレースに影響を与えようとしている。

 首相在任中に「ライオンハート」としてよく知られていた小泉氏は、その才能を全く失っていない。表舞台を離れて何年も経った後、昨年秋、自身が率いた与党・自民党の原発推進政策に対抗するために再びその姿を現した。

脱原発でタッグを組んだ2人の元首相

 小泉氏は今月、2月9日の東京都知事選に、自民党の支援候補に対抗し、同じくかつて首相を務めた細川護煕氏への支持を表明することで、一段と関与を深めた。細川氏は1月22日、都知事選への立候補を宣言した。

 細川氏の支持表明は驚きをもって受け止められた。かつて細川氏は、40年ぶりとなる非自民党政権を率いたが、収賄疑惑が浮上した後、辞任に追い込まれた。同氏は姿を消し、陶芸に対する情熱にふけった。細川氏は大名の血筋をひいている。そんな同氏の立候補表明は、自身も武家の出身である甘利明経済産業相から「殿、ご乱心を」という嘲笑的な反応を引き出した。

 原発政策を巡り、2度目の政権を担う安倍晋三首相に公然と挑むことにした小泉氏の決断には、歌舞伎のドラマのような要素がある。2006年当時、小泉氏は安倍氏を後継者に選んだ。しかし、安倍氏は首相に就任すると、日本の巨大な郵政事業を民営化する重大な戦いで小泉氏が追放した造反者の多くを復党させ、その好意に報いた。

 小泉氏は今、かつての弟子に教訓を与えるために戻ってきたのかもしれない。都知事選の候補者である宇都宮健児氏は、小泉氏は「軽視されることを嫌うタイプの人間」だと話している。

 だが、福島原発事故後の原発に関する小泉氏の転向は本物に見える。昨年のフィンランド訪問で、小泉氏は地中に埋められた放射性廃棄物が10万年経っても有害だということを知り、愕然とした。地震が多発する日本で安全な核廃棄物処理場を建設することは「不可能」だろう。

 また稀代の経済自由主義者の小泉氏は、日本の電力地域独占体制の聖域に大鉈を振るうチャンスを楽しむかもしれない。電力会社は郵政事業のように、政治家と官僚の馴れ合い関係のおかげで生き残っている。